2024年12月22日(日)

赤坂英一の野球丸

2020年1月29日

 試合時間のスピードアップを目指すNPB(日本野球機構)と12球団が、ワンポイントリリーフを禁止する新ルール導入を本格的に検討していくことになった。22日の12球団監督会議の議題に上り、来季の実現に向け、NPBの担当者がキャンプや球場で現場首脳陣の意見を収集するという。

(Augustas Cetkauskas/gettyimages)

 念のためにおさらいしておくと、ワンポイントリリーフとは、相手打者の右左によって投手を交代させる起用法。右投手が登板している最中、代打に左打者が出てくると左投手に替え、次に右打者が出てきたらまた別の右投手に投げさせる。こういう〝一人一殺〟の小刻みな継投は、最近ではDeNAのラミレス監督が得意とするところだ。

 しかし、アメリカのMLB(メジャーリーグ)では、このワンポイントリリーフが試合時間の遅延の要因になっているとして、今季から禁止することを決定。投手が交代したら打者3人、もしくは登板したイニングが終了するまで投げなければならなくなった。

 MLBでルール変更が行われると、1~2年後にNPBでも採用されるのが最近の傾向だ。コリジョンルール(本塁上での捕手と走者の接触及び捕手による走者の進路妨害を禁止)は2014年にMLBで実施され、16年にNPBも導入した。申告敬遠(監督が審判に敬遠を伝えれば投手は4球投げなくてもよい)は17年にMLBが新設し、翌18年にNPBも取り入れている。

 しかし、そうしたルールの変更が行われるたびに、私のような50代以上のファン、長老格のプロ野球OB評論家は異を唱えてきた。「コリジョンルールのおかげで、以前のようなスリリングでエキサイティングな見せ場が失われた」「申告敬遠はかつて巨人・クロマティや阪神・新庄剛志が敬遠された球を打ち、サヨナラタイムリーヒットにして見せたようなドラマを奪った」というのである。

 では、今回のワンポイントリリーフの禁止により、どのような野球の醍醐味が失われるのか。すぐに思い浮かぶのは、野村克也が阪神監督時代の1999~2000年、ファンとマスコミを沸かせた〝遠山・葛西スペシャル〟である。

 当時、阪神でリリーフ左腕の切り札だった遠山奬志の登板中、代打などで右打者が出てくると、野村監督は右アンダースローの葛西稔にスイッチ。遠山は一塁に回り、葛西が右打者を打ち取ったらベンチに下がって、次の左打者の打席でふたたび遠山が一塁からマウンドに戻る、という継投法だ。

 逆に葛西が一塁を守ったり、葛西の代わりに伊藤敦規を挟んだりと、野村継投は様々なバリエーションを見せ、テレビや新聞にとっては格好の話題となった。当然のことながら、こういう継投が行われる試合は接戦が多く、誰もが固唾を呑んで成り行きを見守った。

 まだ地上波で放送されていたフジテレビの『プロ野球ニュース』では、解説者が様々な論評を加えていたものだ。ノムさんは「弱者の兵法」と謙遜していたが、平成のプロ野球を振り返るのに欠かせない名場面として記憶されている。

 来年からワンポイントリリーフが禁止されれば、もうこういう〝野村マジック〟的継投は見られない。野村監督以降20年、こういう戦法を好んで使った監督はいなかったから、すでに廃れた作戦とも言える。が、それでもルールとして禁じ手にされると、時の流れと一抹の寂しさを感じないではいられない。

 それにしても、こんな新ルールを導入したからといって、どれほど試合時間が短くなるのだろう。ちなみに、時間短縮のために申告敬遠が導入された前後の平均試合時間は導入前の2017年が3時間8分(9回のみ)、3時間13分(全試合)。導入後の18年が3時間13分(9回のみ)、3時間18分(全試合)と、逆に長くなっている。19年は3時間16分(9回のみ)、3時間21分(全試合)と、さらに延びた。

 これは18年から導入された、監督が審判にビデオによるリプレー検証を要求できるリクエスト制度の弊害でもある。とりわけ微妙な判定の確認に時間がかかるため、投手が4球投げる手間と時間を削ったぐらいでは効果がなかったらしい。


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