赤坂英一の野球丸

2020年1月29日

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最大の原因は投手の投球間隔の長さ

 こんなことになっている最大の原因は何なのか。敬遠や継投ではなく、投手の投球間隔の長さにある、と私は思う。これは春と夏の年2回、甲子園で行われる高校野球とプロを比較すればはっきり感じ取れる。一日3~4試合消化しなければならない高校野球の投手は、プロが1球投げる間に2~3球投げる。私のようなプロの試合に慣れた年寄りのライターは、うっかりしているとスコアブックにボールカウントをつけ損なうほどだ。

 それだけ投球間隔が短い上、1-0、2-1といったスコアで9回までに試合が終わると、かかった時間は1時間半程度。試合後には、監督と高野連の関係者が「いやあ、高校野球の見本のようなゲームでしたね。いつもこうでないといけません」と互いに褒めあったり、労いあったりしている。高校野球では大体16日間で48試合を消化しなければならないため、1分でも1秒でも早く試合を進行させようという意識が、参加校にも関係者にも徹底されているのだ。

 こういう大会を取材したあと、プロ野球の取材を再開すると、最初のうちは投手の投球間隔の長さにイライラさせられる。高校球児が2~3球投げる間に、こちらはやっと1球しか投げないのだ。これでは試合時間が2倍にも3倍にもなるわけである。

 NPBが手をこまねいていたわけではなく、これまでにも時間短縮のために様々な手段を講じてきた。監督・コーチが投手への指示や助言のため、マウンドに行ける回数を1イニング1回、捕手の場合は1イニング3回(延長戦では1回)までに制限するという規則もそのひとつ。

 さらに、最も平均投球間隔の短かった投手、平均試合時間がリーグで最も短かったチームなどを表彰する「スピードアップ賞」を創設。セ・リーグは1999年、パ・リーグは2013年から開始し、16年からはコミッショナー表彰として行うことになり、特別協賛の冠スポンサーもつけ、「ローソンチケット・スピードアップ賞」と名称を改めている。

 ちなみに、昨季のスピードアップ賞の受賞者は、セ・リーグの投手が巨人・メルセデス(平均投球間隔9.2秒)、チームが中日(同試合時間3時間9分)。パ・リーグの投手がソフトバンク・高橋礼(平均投球間隔10.0秒)、チームがオリックス(同試合時間3時間13分)だった。相手投手の平均投球間隔が最も短かった打者としてセはDeNA・大和、パはソフトバンク・福田周平もそれぞれ表彰されている。

 〝時短政策〟でNPBの先を行くMLBでは近年、首脳陣や捕手がマウンドに行ける回数(米国ではマウンド・ビジット・リミッツという)をさらに減らした。18年から1チームにつき9回までは6度、延長戦は1度までという新ルールを導入。それだけでなく、イニング間の攻守交代及び投手交代の時間を2分5秒まで、テレビなどで全米中継される場合はCMの流れる時間を含めて2分25秒までと、それぞれ20秒短縮している。

 ただし、最も肝心の投球間隔制限(ピッチクロック)については、選手会からの反発が強く、昨年2月に「少なくとも2022年まではレギュラーシーズンへの導入を見送る」とMLBが発表した。ピッチクロックは投球間隔を20秒までと規定し、これを超えたら打者に1ボールが与えられるという新ルール。マイナーリーグでは1A、2Aで2015年から実施されており、試合時間の短縮に一定の効果をあげているという。

 しかし、昨年のメジャーのスプリングトレーニングで初めて試験的にピッチクロックが行われたところ、メジャーの投手たちが異論や違和感を表明。「打者との心理戦を時間で制限されたら野球の魅力が失われてしまう」「野球の本質にもかかわる」などと反論し、22年まで継続審議とされることが決定した。野球のレベルが上がると投球間隔が長くなるのは避けられないことなのか。

◎参考資料

 ニコニコ大百科/遠山・葛西スペシャル

  
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