2024年4月27日(土)

赤坂英一の野球丸

2020年1月15日

 オリンピックイヤーの今年、スポーツマスコミやプロ野球ファンの話題は、侍ジャパンが金メダルを獲れるかどうか、で持ちきりである。が、新人合同自主トレが行われているグラウンドなど、年明け早々に取材現場で顔を合わせた各球団の関係者たちは、異口同音にこう言っている。

(kid-a/gettyimages)

 「今年のセ・リーグは面白くなりそうだね。どこが優勝するのか、これほど読めないシーズンも久しぶりじゃないですか」

 昨年のセ・リーグは4連覇を目指した広島がBクラスに陥落し、巨人が5年ぶりにペナントを奪還。DeNAが4位から2位、阪神が最下位から3位に浮上して、勢力図が大きく変わったことを印象づけた。

 巨人は第3次原辰徳政権2年目の今年、昨季引退した阿部慎之助が二軍監督に就任。元木大介がヘッドコーチに昇格し、打線のテコ入れとして前ヤクルト打撃コーチ・石井琢朗が野手総合コーチとして移籍するなど、リーグ連覇、日本一奪回に向けて着々と準備を整えているかのように見える。

 しかし、あるチーム関係者はこう言った。

 「いくら首脳陣を刷新しても、肝心の戦力が大幅にダウンしている。何と言っても、昨季15勝で最多勝のタイトルを獲得した山口俊(メジャーリーグ・ブルージェイズに移籍)が抜けた穴が大きい。菅野智之も昨季は11勝どまりで、防御率も過去最悪の3・89。

 今季は先発でメルセデス(昨季8勝8敗)、桜井俊貴(同8勝6敗)、高橋優貴(同5勝7敗)、それにリリーフで中川皓太(同4勝3敗16セーブ17ホールド)らがどれだけ数字を上積みできるかにかかっている。ただ、彼らはまだ若く、一軍では実質2年目。本番で投げさせてみないとわからない部分が大きいから」

 今オフは、美馬学(楽天→ロッテ)、鈴木大地(ロッテ→楽天)らの獲得を狙ったFA補強にも失敗した。打線の中軸を担う坂本勇人、岡本和真、丸佳浩は盤石とはいえ、彼ら主力と控えとの実力差は如何ともし難く、ケガやアクシデントがあったらどうするのか、という不安がつきまとう。

 戦力的上積みがないのは、監督が緒方孝市から佐々岡真司に交代した広島も同じだ。守備の要、セカンド・菊池涼介の残留は好材料としても、二遊間コンビを組むショート・田中広輔が昨季の不調(打率1割9分3厘、3本塁打、27打点、8盗塁)、手術した右膝の後遺症からどこまで復調できるか。投手陣では昨季夏場、自己ワーストの4連敗を喫したエース・大瀬良大地の状態も気にかかる。

 このように、巨人、広島が決め手を欠く中、「今年こそ22年ぶりに優勝するのではないか」と見られているのがDeNA。冒頭の巨人のチーム関係者もこう言っている。

 「何だかんだ言ってもDeNAの投手力はダントツ。エースの今永昇太(昨季13勝7敗)をはじめ、東克樹(同4勝2敗)、浜口遙大(同6勝5敗)ら、状態さえよければ2ケタ勝てる先発がそろっている。後ろも抑えの山崎康晃(同3勝2敗30セーブ4ホールド)、中継ぎの三嶋一輝(同5勝4敗28ホールド)、パットン(同0勝3敗22ホールド)、エスコバー(同5勝4敗33ホールド)がいて、層の厚さはリーグで一番」

 しかし、今季は主砲の筒香嘉智がメジャーリーグのレイズに去り、自慢の打線に大きな穴が空いた。これが弱点になることはないのかと思ったら、あるベイスターズOBはこう指摘している。

 「いや、チームにとってはかえって〝重し〟が取れると思いますよ。選手たちも、昨年以上にノビノビとバットを振れるようになるんじゃないかな。かつての筒香は確かに勝負強く、主砲として頼りにされる存在だった。でも、ここ2~3年はチャンスに弱くなって、ラミレス監督も筒香を4番から3番や2番に降格したりしていたほどですからね」

 実際、筒香の得点圏打率は、14年4割1分6厘(セ、パ両リーグ1位)、15年3割4分4厘(セ3位)、16年3割9分3厘(セ1位)と、このあたりまでは球界随一の勝負強さを誇っていた。が、17年は2割9分2厘に下降し、18年は自己ワーストの2割3分7厘まで落ち込んでいる。DeNAでの最後のシーズンとなったも昨季2割7分2厘と、復活したとは言えない数字に終わった。そこで、前出のベイスターズOBが言う。

 「筒香はチームの主砲であり顔だから、少々打てなくても、打順を下げてでも使わざるを得なかった。そういう状況では、選手たちにも鬱憤やストレスが溜まっていた。なんで筒香だからっていつも試合に出られるんだ、おれにもチャンスを与えてくれればいいのにと、口に出さなくても内心で歯がみしていた選手も少なくないはず。そういう重苦しい状態が、筒香がいなくなったことによって一気に解消される効果が期待できるんですよ」

 となれば、ラミレス監督にはぜひ、ポスト筒香に伸び盛りの日本人を抜擢してほしい。現状では18、19年の2年連続本塁打王ソト、新外国人オースティン(前メジャーリーグ・ブルワーズ)が今季の4番有力候補だろうが、17年首位打者の宮﨑敏郎に加えて、パンチ力のある佐野恵太、細川成也ら、大化けしそうな素材もいる。そういう起用がハマり、勢いがつけば、22年ぶりの優勝も夢ではない。


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