2024年11月25日(月)

赤坂英一の野球丸

2020年1月15日

ヤクルトも優勝争いに絡んでくる可能性

 同じような意味で、昨季最下位だったヤクルトも優勝争いに絡んでくる可能性はある。カギとなるのは、主砲バレンティンがソフトバンクに移籍して空いた打線のクリーンアップと外野の一角を、どんな選手が埋めるのか、だ。

 11~13年と3年連続本塁打王となり、13年には日本史上最多のシーズン60本塁打を記録した主砲バレンティンも、素行や性格に対する評判は決して芳しくなかった。昨季は外野守備の緩慢なプレーで逆転負けの原因をつくり、翌日の試合で小川淳司監督からスタメン落ちのペナルティーを科されている。

 これに腹を立てたバレンティンは、ホームを踏んだチームメートがベンチに帰ってきても出迎えのハイタッチに参加せず。「そんなふて腐れた態度を取るのなら帰れ!」とまたコーチに叱責された。バレンティンはすぐに感情が態度に出てしまうタイプで、悪気がないことはわかるが、とかく周囲に手を焼かせる困った主砲だったのである。

 そのバレンティンに代わる4番候補の筆頭は言うまでもなく、昨季の新人王・村上宗隆だ。昨季は高卒2年目で143試合に出場し、36本塁打、96打点(ともにセ3位)をマーク。さらなる成長が期待される中、あるコーチは村上の課題についてこう指摘していた。

 「長打力と勝負強さにかけては、確かに非凡なものを持っています。ただし、去年のヤクルトは16連敗(リーグワーストタイ記録)を喫するなど、優勝戦線はおろかAクラス争いにも加われなかった。つまり、村上がいくら本塁打や打点を稼いだとはいっても、チームにとって絶対負けられない厳しい局面はまったく経験していないわけ。そういう真の意味でプレッシャーがかかる試合で、去年のような打撃ができるのか、ですよ」

 昨季はもうひとり、楽しみな若手も現れた。バレンティンが夫人の産休で帰国した夏場、小川監督が5番に抜擢したドラフト2位新人・中山翔太だ。中山はこの起用に応え、連続スタメン出場14試合で打率3割2分8厘、4本塁打、10打点と大活躍し、チームの低迷を食い止める起爆剤となった。

 チームメートにつけられたニックネームは同姓のお笑い芸人・なかやまきんに君にあやかった「きんに君」。ムードメーカーの役割も果たしたこの若者を、小川監督はこう評価していた。

 「中山は打席での雰囲気やスタイルがいい。キャラも好感が持てるし、将来的な楽しみを感じさせるね。これからは、コンスタントに結果を出せるよう、レベルを上げていかないといけない」

 この時点ですでに、ヤクルト首脳陣は中山について、いずれバレンティンに代わるクリーンアップ候補のひとりと見なしていたのである。先のコーチによると、こういう構想もあるそうだ。

 「3番にはショートの広岡大志(4年目・22歳)、4番は村上、5番は中山、それに足のある塩見泰隆(2年目・26歳)を、クリーンアップの前か後ろに持ってくる。そんな打線が組めたら面白い」

 そういう将来性豊かな選手たちの中から、いずれは侍ジャパンの中軸を担う選手も出てくるかもしれない。東京オリンピック開催のため、開幕が3月20日に早まる今年、まずはセ・リーグがどんな混戦になるか、要注目である。

  
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