スウェーデンで生きる 海外移住だより

2012年5月15日

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 これは、国内大手の高齢者介護施設、Caremaのずさんな実体が表面化した不祥事です。ベンチャー企業であるCaremaは、投資家の収益を重視した運営を行っていました。サービスの質を下げてでも、削れるコストは削る。例えば、人件費節約のために、夜は入所者をベッドに縛り付けていた事例も見つかっていますし、オムツの交換も、一定の重量になるまでしてはいけない、という指示が出されていました。この一連の事件は入所者の親族による発覚が口火となり、それまでマスコミへの口止めとして圧迫を加えられていた従業員たちも、次々と企業の不正を告発しました。

 社会福祉における民間企業の利潤追求、また、経費削減からおきるサービスの質の低下に対する疑問や不安の声は、昨日今日のものではありません。1992年に施行された「エーデル改革(高齢者介護改革)」以降に進んだ、高齢者福祉の民営化。この改革で、高齢者介護の業務は県から地方自治体の管轄に移され、「特別住宅(介護施設、サービスハウス、グループホームそして医療施設の総称)」が整備されました。それとともに、民間企業への業務の委託が広まったのです。

 しかし、そうした民営施設への公的監視は厳しく行なわれておらず、国も地方自治体も、施設の質の向上や運営の透明性に十分目を向けてきませんでした。今回のスキャンダル以来、高齢者福祉の在り方を問う議論が一層熱くなっています。

高齢者の自宅生活を重視

 皆さまの想像を打ち崩すような話ばかりで、失望させてしまったでしょうか。しかし、スウェーデンは、それでも国際的に見て、高齢者の豊かで自立した生活支援が進んでいる国であるということはお伝えしたいと思います。

 先述の通り、この国の高齢者政策の最重要原則の一つは、「公的施策は、高齢者がたとえ広範な医療や社会的介護を必要とする場合でも、出来るだけ長く自宅で生活して行ける方法をとるべきだ(スウェーデン政府内閣府 ファクトシート 社会保健省)」ということです。

歩行器を使って散歩する高齢者の姿は、天気の良い日の定番風景と言っても過言ではない。

 スウェーデンは早くも1970年代から、在宅介護サービスや在宅医療に力を入れ、より多くの高齢者が自宅で安心して生活を送れるように努めてきました。また、エーデル改革の成果もあって、特別住宅や24時間態勢の在宅介護サービスが更に広がりました。全国医療福祉委員会(Socialstyrelsen)によると、2011年10月1日現在、65歳以上の高齢者のうち特別住宅に入所している人は5%、80歳以上に限っても15%ほど。一方で、在宅介護サービスは、その数値が65歳以上は9%、80歳以上は24%になります。つまり、高齢者の95%は自宅で生活を営み、必要となれば在宅介護を依頼しているということになります。

 この在宅介護サービスも、高齢者の世話を丸ごと引き受けるのではなく、出来る限り本人が活動的に生活を送れるようにサポートすることを第一としています。街中でも、介護ヘルパーが歩行器を押す高齢者に付き添って歩いている姿がよく見かけられます。

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