inaho社・菱木豊さん
オモロイと思っているポイント
- 急速に担い手不足となる一次産業で救世主となりうる事業モデル→inaho社、たった2年で事業化へ
- 徹底したマーケット(就農家側)ニーズに即応
- 全くロボット、AIと縁遠い経歴から起業へ
- SaaSではなくRaaS
- 大手企業には参入が難しいワケ、出来ていない
- 米(一括収穫)以外は機械化、省力化が遅れている選択収穫は難しい。
農業就業人口の変遷を調べると、2010年、260.6万人が2019年、168.1万人と8年で90万人超が減少している現実(農業労働力に関する統計より)、この担い手不足解消には、外国人労働力を大いに頼っている場面も報道等で見られます。国内の次世代農業のあり方にチャレンジするスタートアップも昨今増えている中、会社設立からたった2年という圧倒的スピードで事業化し、実際、農家に導入されている自動野菜収穫ロボットを開発したinaho社の代表取締役CEO 菱木豊さんに今回、話を伺いました。
農家の担い手代わりにロボットが活躍が本格化、そしてRaaSモデルを導入
最初に畑で活躍するロボットの動画をご覧ください。
動画の冒頭は人間が作業しているところから、スマホを片手に操作、inaho社が開発した自動野菜収穫ロボットが農場へ、そこからアスパラガスを1本、1本確認し、選択しながら収穫(カット)し、カゴへ。人間はロボットが収穫運搬してきたカゴを受け取る。過酷な収穫作業から人が解放されることに。
ロボットの仕様と特徴
- 1本のアスパラガスを収穫する時間は現在12秒でロボットの稼働時間はおおよそ10時間、当たり前ですが労働法の適用外、夜間、深夜の間でも収穫可能。
- サイズは、全長125㎝・全幅39cm・高さ55cm、既存の農場でそのまま使用できる大きさで開発。
- 対応作物はアスパラガス。今後の予定はトマト、いちご、きゅうり、ピーマン、ナスなど。
- ロボットの特徴として、設定したルートを自動で収穫。カゴがいっぱいになったらスマホに通知、ロボットが取得したデータを解析、生産と経営の両面からサーポートする。
「農家にとって機械・設備への投資は大きな障壁があります」と言う、菱木さん。そこで同社では農家に無理なく「機械化・省力化」へ移行できるようにRaaSモデル(Robot as a Service)を採用しています。ポイントは以下のとおり。
- ロボットを販売でなく無償でレンタル、導入費ゼロで利用可能。
- 収穫高に応じてロボットの利用料を支払い。
- 最新の技術やパーツをロボットに取り入れ、性能が継続的に向上。
- 故障によるメンテナンス費用も不要。
初期投資、自己負担、性能がアップデートし続ける(最新のパーツに交換をする)、今までの業界にはなかったモデルを導入したinaho社、日本の農業に大きな転換点をもたらすと感じます。昨年2019年にアスパラガス・きゅうりの一大農地である佐賀県鹿島市に拠点を開設しました。2022年までに九州地区で24拠点、全国40拠点を開設を予定しています。
目指す姿と収益モデル
現在の菱木さんたちが考える農業の課題は以下のような点です。
- 高額な初期投資 → 多くの農機具は高額で、高齢の農家はこの先何年農業をやるか分からないので購入のリスクが高い。
- 地方の人材不足 → 地方の労働者不足は深刻で、収穫作業を担う人材をがいなくて生産面積を拡大できない。
- 休みがない → 収穫期間は毎日が収穫作業で休めない。
- 腰が痛い → 腰をかがめて行う収穫作業は身体への負担が大きい。
菱木さんは、「テクノロジーで、農業の未来を変える」と言います。「農家さんが雇う人が半減しても、所得が2倍になる未来」を目標に設定して、自らの立ち位置を「農家と共同事業を行うサービス事業者」としています。機械を販売して終わりではなく、農家を農業家として経営思考、そのためのツール提供まで視野に入れ、持続的に経営者としても成長できる環境を提供していきたいと思っています。
強みとして以下の3点をあげます。
- ソフトウェアもハードウェアも自社開発している(ロボット製造は外部委託)
- 農家毎・品目毎の大幅なカスタマイズが不要な設計思想
- 最速での開発実装体制
マーケット戦略として、「選択収穫」の野菜・果物をターゲットにしていることも大きい、と菱木さんは言います。「選択収穫」に対して、米、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、ねぎ、レタスなどは「一括収穫」の生産物です。こちらは機械化がすでに行われています。inaho社が取り組む、「選択収穫」の生産物は自動化のハードルが高い、単価が高いため参入するマーケットとして収益の目処も立ちやすいと判断し、その中でも成長力が高いアスパラガスを最初に決めて開発をスタートしています。
同社は、「自動野菜収穫ロボット」を多く生産していくことを主眼としているところにも、面白さがあると感じます。同社のロボット開発フローからその一端が見えてきます。
- 開発STEP1 → 移動:農場内、ハウス内のライン上の自律走行により移動を行う、ハウス間移動も可能に。
- 開発STEP2 → 探索:AIを駆使して果実と枝等を判別。探索した果実に対し収穫。適期かどうかを判別。
- 開発STEP3 → 収穫:アームの軌道生成を行う。収穫し、カゴに収納する。
- 開発STEP4 → データ:収穫した果実のデータを残す。定期的にクラウドにアップロード。未収穫の野菜や病害虫のデータも判別。
ポイントは、STEP4のデータ部分、今後導入農家が増え、エリアも拡大していけば、収穫予測、病害虫の予測、市場や流通とデータ連携ができるようになります。
そうすると、生産者側が価格の予想もできるようになっていく世界感、省力化だけでも大きな意味がありますがその先に大きな変革へとつながっていると感じます。
inaho社ののRaaSモデルを導入した場合、特筆すべきは、