2024年11月22日(金)

オモロイ社長、オモロイ会社

2020年3月10日

農業ロボットへ参入したワケ

菱木さん(中央)

 会社設立からたった2年で事業化し、実際にロボットが稼働しているinaho社、圧倒的なスピードを感じますが、共同代表のの菱木さんはロボット、AIの知見をもった研究者や事業を過去から手がけてきた経営者ではありません。その経緯についてお聞きしました。

 「その時々で人が喜んでくれることに喜ぶ自分がいることに気付きました」

 そう話す、菱木さん、学生時代語学留学でアメリカへ、その時、友人宅で料理を振る舞うと「美味しい」と言ってもらう事が無性に嬉しかったそうで、調理師学校に通うほどに。

 新卒で入社した会社では不動産投資のコンサルとなり、投資へのプランニング、物件の紹介、投資セミナー講師を担当していました、そこにリーマンショック、組織の限界を感じて独立、不動産コンサルとしてお客さんに喜んでもらえる形で対応しながら、webサービス、イベントの事業を展開をしていました。

 その後に発生した、東日本大震災、自分にできることとして、石巻へ災害ボランティアとして趣き、復興の手伝いをしている時に、現地の皆さんから「支援をありがとうございます」の言葉に菱木さんは「こちらこそありがとうございます」と伝えたそうです。人柄を感じます。

 このボランティアをしている時に感じた感覚、それが音楽フェスに来る人の行動、情熱に近いものを感じ、入場無料のフェスイベントを企画、開催を実行、見事に成功するも、結果的に多額のの赤字を背負ったそうです。

 この時に、「みんなで想いを持ってプロジェクトを行う大切さ」と「赤字はいけない、収益をきちんと上げる大切さ」この2つの教訓を心に刻んだと話します。

 地元、鎌倉の農家さんとの対話から農業に興味が湧き、IT化のみならず多方面で遅れた世界であることを知ります。

 フェスに集う人たちと同じような労働体系(通年雇用が難しい環境)で働いているのが、農場での就労者も共通していることに気づいた菱木さん、双方通年で収入が得られない状況を知り、農業における雇用の課題を感じました。

 農家の皆さんに課題を聞いていた頃、それが2014年頃、菱木さんはAIについての勉強会の事務局をサポートしていました。

 AIやロボティクスの時代が来ることを予見しながら、どこにブルーオシャンがあるか?農業の世界ではどこか?マーケット選定している時にレタスを自動で間引くロボットを開発するアメリカ企業の存在を映像で見たそうです。地元、鎌倉の農家さんからは畑にある雑草を間引くロボットができないか?と相談があり、当初はその事業化を真剣に考えていたそうです。

 AIの勉強していた関係で、ソフト面(画像解析やAI部分)については自信があったそうですが、ロボット部分(可動や駆動部分)の開発には知見がなく、そこから大学の先生100名くらいにアプローチをして、医療用のロボットアームを改良して活用できないか相談し、続いて自律走行ができる技術を研究する大学の先生を見つけて、ロボットアームは半年、自律走行は1年で完成するに至りました。

 マーケット選定を再度していく中で、雑草ではなく選択収穫における野菜や果物にターゲットを変え、現在のアスパラガスにまず市場を決めて取り組むようになりました。

 このアスパラガスに選定する際も、大学の研究室をあたった時と同様に、農家に50軒ほどアプローチしたそうです。資金がない中、何がなんでも、農家の声を聞く事に徹した事から、RaaSモデルに行き着いたそうです。

自然に人が集う会社へ、これからの展開について

 現在、inaho社に集うメンバーは25名、大手自動車メーカー、精密機械機器メーカー、大手人材会社、等々名だたる会社から集っています。採用に関して労苦を感じないという菱木さん、その理由を尋ねると『我々は新しいカテゴリーの事業体である事、新しい価値創造に魅力を感じて集ってくれる人が多いです。採用に関して実はそんなに苦労はしていないです。意外と普通の採用をやっているだけなんです。』まさにブルーオーシャン、高いモティベーションを求めて人も集まっている事だと感じます。

 日本での展開もこれから大きな動きになろうとしているinaho社ですが、今年には海外での展開、特に農業先進国であるオランダにて展開を標榜しています。

 「収穫作業の自動化は日本だけでなく、世界的にも進んでいない状況のため、自動野菜収穫ロボットのニーズは大きいのです。日本発のテクノロジーをいち早く世界の農家さんにお届けできるように、事業と開発を進めていまいります」

 社名に込めた、「稲穂は日本において古くから、五穀豊穣の象徴です。関わる方々が、より豊かに穣ることを願っています」を具現化される近未来が楽しみであり、注目したいと思います。

  
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