Wedge REPORT

2020年3月4日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

東京オリンピックへの影響

Q 今回のような新型ウイルスの大流行(パンデミック)が来ることは、予想されていたことか。

小島氏 昨年の3月にWHOが2030年までの世界的なインフルエンザ対策を公表、パンデミックはいつ起きてもおかしくなく、最悪の場合、世界で数百万人が死亡するなど甚大な被害をもたらすと警告。各国に対して有効なワクチンの開発や検査・予防、治療体制の充実など十分な対策を取るよう要請、今後は「起きるかどうかではなく、いつ起きるかが問題だ」と警告していた。

Q 今回のCOVID-19流行の対策について最も訴えたいことは何か。

小島氏 日本はどうして中国政府に対して、新型コロナウイルスについての感染者のデータを渡してくれ、公開しろと言わないのか不思議だ。これだけ世界で大騒ぎになっているのに、データの提供、公開をしてもらえないのは、あってはならないことだ。安倍首相は習近平国家主席に対して強く言うべきで、日本からも医療関係者を派遣すべきではないか。WHOも中国に対して情報を要求している様子が見えないのも理解に苦しむ。

Q 東京オリンピック・パラリンピックへの影響はあるか。

小島氏 今の段階では開催の可否は50%、50%。日本人としては本当に無念、残念だが、今後さらに感染が広がって開催の可能性が低くなりそうだ。これまで大流行した感染症で半年間に完全終息したケースは見当たらない。例えば、09年に起きた新型インフルでは日立グループの会社で6月に社員が発症し11月まで患者が増え、終息したのは翌年の3月だった。暖かくなったら収まるという専門家もいるが、そうなるとは限らないので、油断しない方が良い。

Q 政府がとった新型ウイルスの対応のための予算額が少なすぎる気がするが。

小島氏 当初発表の金額が、わずか百何十億円であったのは、驚いた。米国や香港が一桁違う規模の対策費用を充てている方針と比べると、当初の対策費用は明らかに少なすぎた。

感染症リスクに備える医療体制を

Q 感染症の医療体制の遅れが指摘されているが。

小島氏 現在で、感染症指定医療機関が400程度、ベッド数は2000床足らずしかなく、大流行した場合は全く足りない。また人工呼吸器も不足するのは必至で、いまのままでは重症患者を救えなくなってしまうことになり、早急に増やす必要がある。しかし、各病院は経営上から、普段は必要のない人工呼吸器を余分に用意しておくことは負担になるため積極的にはなれないはず。これを用意させるには、政府が補助するなどの対策が必要だろう。

Q 感染者を減らすことができるワクチンの製造の可能性は。

小島氏 いろいろな治療薬の効果が指摘されているが、ワクチンについては効果があるワクチンを開発して安全に使えるまでには1年から1年半くらいかかり、それほど早急にはできない。政府は既存の治療薬で何とか対応しようとしているが、現段階では効果は未知数のようだ。

小島 俊郎(こじま・としろう)1953年生まれ。77年に日立製作所に入社、99年に社長室部長、2013年にリスクマネジメントダイレクター。14年に日立を退社し共同通信デジタルに入社、執行役員・リスク対策総合研究所長。13年にアルジェリア人質事件を受けた有識者懇談会委員、15年に内閣官房政策調査員など大事件の政府検証に携わる。種々の分野におけるリスクマネジメント対応に詳しい。09年にアニメのよる啓蒙ビデオ「新型インフルエンザの脅威」(国立感染症研究所監修)を出版。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る