前向きに読み解く経済の裏側

2020年2月28日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 新型肺炎で行楽等の需要が落ち込み、景気が悪化していますが、何より急ぐのは中小企業の資金繰り対策だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

 新型肺炎の経済への影響を試算するのは時期尚早ですが、だからと言って対策を採らなくて良いわけではありません。そこで本稿では、世界でも日本でも新型肺炎の流行は限定的で、半年程度で収束に向かう、という前提で対策を考えます。

(Kritchanut/gettyimages)

狭い範囲に悪影響が集中し、短期間での回復が見込まれる

 通常、景気が後退すると、売り上げが減った企業が減産をするので雇用が減り、仕事を失った人が所得を失って消費をしなくなり、企業の売り上げが更に減少する、といった悪循環で景気が悪化を続けます。所得減による消費減は、幅広い業種に悪影響を与えるはずです。

 それを止めるのは政府日銀の景気対策ですが、対策を講じてから景気が回復するまでに、比較的長い時間を要するのが普通です。

 しかし今回は、需要の落ち込みが急な一方で、新型肺炎の収束宣言が出てからは、回復も急でしょう。人々の懐具合は行楽費用が浮いた分だけ良好とも言えるからです。それから影響を受ける業界や企業が狭い範囲に集中していて、影響を受けない企業も多い、ということも特徴でしょう。

 つまり、通常の不況対策とは異なった対策が必要となるのです。それが、中小企業の資金繰り支援です。

企業が倒産したら景気回復後に復活できない

 嵐で傾いた船がそのまま倒れてしまうのか元に戻るのかは、わずかな違いで決まりますが、その結果は大きく異なります。したがって、嵐が通り過ぎるまでの間を何とか耐え忍ぶことができるか否かが勝負なわけです。

 企業の倒産も同じです。不況時に倒産してしまうのか、倒産寸前でも耐えて次の景気回復まで生き延びるのか、わずかな違いで決まるとしても、結果は大きく異なります。特に、今回の不況はおそらく短期間で終わるでしょうから、その期間を耐え忍ぶことができるか否かが極めて重要なわけです。

 そして、企業の生死を分けるのは、資金繰りです。短期的に売り上げが落ち込んでも、資金繰りさえ破綻しなければ、次の好況時に売り上げも利益も回復するでしょう。

 そうであれば、資金繰り難になった企業を銀行が支えれば良いのです。銀行が支えている間に景気が戻れば、借り手企業は助かりますし、失業が増えないので景気にもプラスですし、銀行にとっても貸出が全額回収できるわけですから、悪い話ではありません。

 もっとも、銀行にとっては傾いた企業を支えるというのは大きなリスクですから、自発的に支える事を期待するのは容易なことではないでしょう。

 そんな時にこそ、政府が借り手の債務を保証してやれば良いのです。「銀行は、新型肺炎の収束宣言が出るまで、借り手から資金を回収しないで欲しい。その代わり、事態収束後に借り手が破綻したら、銀行の損失は政府が肩代わりするから」というわけですね。

 技術的に可能であれば、「銀行が返済を猶予した先で、新型肺炎の影響で倒産した借り手に関しては」という条件を付けたいですが、緊急事態ですから、難しければ条件を付けなくても良いかもしれませんね。

 これは、急を要します。資金繰りに詰まって倒産する企業が続出してからでは遅いですから。すでに経済産業省では対策(https://www.meti.go.jp/press/2019/02/20200228001/20200228001.htmlを採っているようですが、更なる対策を是非ともお願いしたい所です。

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