前向きに読み解く経済の裏側

2019年12月9日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 10月の消費が落ち込んだ、という報道 がなされていますが、それを「消費増税の影響は深刻だ」と理解してはいけない、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

(n-trash/gettyimages)

10月の消費が落ち込んだのは事実だが…

 家計調査が発表になり、10月の実質消費(物価上昇率差引後の消費、二人以上の世帯。以下同様)が前年比で5.1%の減少となりました。前回の消費税率引き上げ(2014年4月、5%→8%)の時は、前年比がマイナス4.6%だったので、その時より落込み幅が大きい、という結果となりました。

 そこで「10月の消費が大きく落ち込んだ」という報道がなされていますが、それが直ちに消費増税による影響が深刻だ、という事にはならないので、注意が必要です。

駆け込み需要が大きかったから反動減が大きかった面も

 10月の落ち込みが大きかった理由として、もしも9月に大量の駆け込み需要があり、需要が「先食い」されていた事が原因なのだとすれば、「消費が弱い」わけでも「消費増税の影響で消費が落ち込んだ」わけでもなく、単に「統計の振れが大きかっただけ」、という事になります。

 そこで、増税直後、増税直前、その前の月について、実質消費の前年比を見ると、-5.1%、+9.5%、+1.0%となっています。比較的大きな駆け込み需要があったため、増税後の消費が少なかったのだろう、と推測できる数字ですね。

 前回増税時がどうであったか、数字を見てみると、-4.6%、7.2%、-2.5%となっています。駆け込み需要が小さかったから、増税後の落ち込みも小さかった、ということが想像できますね。

 なぜ、前回の方が増税幅が大きかったのに駆け込み需要が小さかったのか、という疑問は残りますが、それはともかくとして、今回の消費の落込みが、消費の不振によるものではなく、単なる「統計の振れ」だろうという推測は成り立ちます。

台風の影響をどう見るか

 10月には、大きな台風19号が来ました。店を閉めた所も多かったでしょうし、外出を控えた買い物客も多かったでしょう。被害を受けた所では、しばらく消費どころではないかもしれません。

 また、大きな災害が発生すると「被災地のことを思うと、自分だけ贅沢をするのは申し訳ない」ということで消費を手控える人が出てきます。筆者は「あなたが消費を手控えても被災者は喜ばないのだから、積極的に被災地の特産品の酒と肴で大いに盛り上がろう」と人々を誘っているのですが、筆者一人では家計調査に影響を与えるほどの消費喚起はできませんので(笑)。

 したがって、10月の消費の落込みは、消費増税の影響と台風の影響を両方受けていることになるわけで、台風の影響を除いた消費増税の影響を求めることは極めて困難です。

 そうなると、11月と12月の消費の数字を見て、消費増税の影響を判断しよう、ということになるはずです。拙速な判断は避けて、今少し様子をみましょう。

理屈上は、大きな落込みは考えにくい

 筆者は、比較的楽観的です。その最大の理由は、増税の規模が小さかったことと、様々な景気対策がとられていることです。ポイント還元などは痛税感を和らげていますし、車の購入を支援する策なども利用されているはずです。

 したがって、仮に前回より落ち込みが大きいとすれば、何か大きな理由があるはずですが、それが思いつかないということは、きっと落ち込みは前回より小さいのだろう、と考えているわけです。

 11月、12月も大きく落ち込むようであれば、何か原因があるはずなので、それが何なのか、筆者は大いに悩むと思いますが、そういう目に遭わずに済むことを祈るばかりです(笑)。

関連記事

新着記事

»もっと見る