財政赤字を家計の赤字にたとえるのはミスリーディングだ、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。
財政状況は家計なら破産、と言われるが
財務省のホームページは、予算を家計にたとえて説明しています 。生活費がいくら、収入がいくらで、不足する分は借金をしている、という説明です。
加えて財務省は「家計の抜本的な見直しをしなければ、子供に莫大な借金を残し、いつかは破産してしまうほどの危険な状況です」「毎月の生活費の水準を抑えることにより……」としています 。
わかりやすい例えで国民の危機感を煽り、増税や歳出削減等に理解を得よう、ということなのでしょうが、いささかミスリーディングです。
家の外から借金をしているわけではない
第一は、「家の外に借金をしている」という例えです。日本国と外国との関係で言えば、巨額の対外純資産を持っているので、日本が外国からの借金に苦しんでいるわけではありません。ここがミスリーディングです。
「父さんが給料以上に使っているので不足分を母さんから借金をしている。一方で母さんは倹約家でしっかり貯めている。そこで、母さんは父さんに貸して、残りを銀行に預けている。父さんは銀行や高利貸から借りているわけではないので、家計としては問題ない」という例えの方が遥かに良いでしょう。
問題は、父さんと母さんの夫婦喧嘩が絶えないことくらいでしょう(笑)。とはいえ、母さんからの借金を減らすのは容易なことではありません。それは、父さんの支出が家族のためのものだからです。