2023年1月28日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年10月7日

»著者プロフィール
閉じる

塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

歳出削減は家族を困らせる

 父さんは、給料を稼いでいますし、サラリーマンの子供から食費を受け取っていますが、それらは一部が父さんの小遣いになるほかは、家族の食費や爺さんの小遣いなどになっているわけです。

 つまり、父さんが母さんからの借金を減らそうと思えば、子供から多くの食費を取り立てるか家族の生活費を削る(この場合、母さんが足りない分の生活費を負担する)か爺さんの小遣いを減らすか、いずれにしても家族を困らせることになります。

 父さんにとっては、子供も母さんも爺さんも大事な家族ですから、食費を取り立てたり生活費を負担させたり小遣いを減らしたりして彼らが困る事態は避けようとするはずです。言い方を変えれば、父さんと子供と母さんと爺さんの小遣いの合計は一定で、誰が多く小遣いを使うか、というゼロサムゲームだ、とも言えるでしょう。

 一方、財務省のたとえだと、「家計簿が赤字だから倹約しよう」、ということになるでしょう。そこで、飲み屋に行く回数を減らしたとします。赤の他人である飲み屋が困るだけで、家族は困りません。それはミスリーディングです。

 政府が財政赤字を減らすために増税すれば国民が困りますし、歳出を削減すれば同様に国民が困ります。国民は政府にとって赤の他人ではありません。家族であるはずです。

 もしかすると、財務省にとっては「重要なのは財政収支である。国民は赤の他人なので、困っても知ったことではない」のでしょうか。そんな筈はないと信じたいですが(笑)。

緊縮財政はマイナスサム・ゲーム

 じつは、筆者のたとえさえもミスリーディングです。父さんと子供と母さんと爺さんの小遣いの合計は一定不変で、単なるゼロサムゲームだというのは、実際には違います。

 増税や歳出削減をすると景気が悪化して税収が減るので、民間の収入が減ったほどには財政赤字は減らないのです。

 子供と母さんと爺さんの小遣いを減らしても、父さんの小遣いはそれほど増えないので、4人の合計の小遣いは減ってしまう、というイメージですね。

 もっとも、余談ですが、10年ほど待つと少子高齢化による労働力不足が進みますから、景気が悪化しても失業が増えない時代が来ると思います。そうなれば、増税しても失業が増えず、個人消費は減らず、景気の落ち込みも限定的だ、という時代になるでしょう。

 そうなった時に、増税して政府が借金を返せば良いので、今焦って増税する必要はない、と筆者は考えています。


新着記事

»もっと見る