2023年2月8日(水)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年10月7日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

子供に借金を残すわけではない

 では、父さんが子供に借金を残さないためには、どうしたら良いでしょうか。子供から受け取る食費を増やして母さんに借金を返せば良いのですね。ただ、そうすれば子供の貯金がその時点で減ってしまいますから、将来父さんから引き継ぐ借金が減っても嬉しくありません。

 増税して今国民の預金を減らすのか、借金を後世の国民に押し付けて後世の国民の預金を減らすのか、どちらを選択しても後世の国民の預金残高は変わらない、ということなのです。

 いまひとつ、母さんに渡す生活費を減らせば良いのですね。そうすれば、母さんから借金をせずに済みます。しかし、その場合には母さんが自分で生活費を負担するでしょうから、母さんの財産が減ってしまいます。父さんに貸す予定だった金が生活費に化けてしまうからです。

 そうなると、子供は父さんから引き継ぐ借金が減る一方で母さんから受け取る遺産も減るので、やはり嬉しくありません。子供のことを考えるなら、引き継ぐ借金だけではなく、相続する遺産のことも併せて考える必要があるのです。

 財務省のたとえでは、子供に借金を残して、子供か孫が破産するかもしれない、ということになりますが、これは借金のことしか考えていないので、ミスリーディングです。

 筆者のたとえでは、子供は父さんの借金と母さんの資産を両方相続するので、破産などしないのです。

 以下は、チョッと極端な話ですが、頭の整理には役立つと思います。日本の少子化が続くと、数千年後には日本人が最後の一人になり、その人は家計金融資産1800兆円を相続することになります。その人が他界すると財産が国庫にはいり、すべて平和に終わることになります。

 つまり、「財政赤字は後世に借金を残す世代間不公平だ」というのは遺産を考えない狭い視野の話であって、実際には次世代は遺産を相続するわけですから、世代間不公平などないのです。あるのは遺産が相続できる子とできない子の「世代内不公平」なのです。

 物事をたとえで説明するのは、わかりやすくて良い場合も多いのですが、ミスリーディングな場合も多いので、説明する時も説明を受ける時も、気をつけたいものですね。

  
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