2024年12月22日(日)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年9月17日

 皆が日経平均を使うのは、TOPIXより優れているからではなく、皆が使っているからだ、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。

(Gary Waters/gettyimages)

英語を学ぶ人が多いのは、英語を学ぶと役にたつから

 世界中に英語を学んでいる人は大勢います。それは、英語が優れた言語だからではなく、英語を学ぶと役にたつからです。もしかすると、日本語の方が言語としては優れているのかもしれませんが、仮にそうだとしても、国際会議が英語で行われている以上、英語を学ぶ方が役に立つわけです。

 そうして、多くの国の人が英語を学んでいるので、明日の国際会議も英語で行われることになるでしょう。明日になって突然「日本語の方が優れた言語だから、今日の国際会議は日本語で行う」と言われても、日本人以外は困ってしまうでしょうから。

 そうなれば、明日の若者も日本語より英語を学ぶようになります。そうなれば、明後日の国際会議も英語で行われ、その後もずっとそうでしょう。

 このように、一度皆が使い始めると、ますます多くの人が使うようになる、というものは世の中に数多くあります。

SNSは、流行っているものが一層流行る

 筆者はFacebookを愛用しています。それは、Facebookのシステムが特に優れているからではありません。Facebookをやっている人が大勢いて、筆者が興味を持つ事を書き込んでくれる人、筆者が書いたものを読んで「いいね」をくれる人が大勢いるからです。

 仮に誰かがFacebookより優れたシステムを作ったとしても、それが流行るとは限りません。最初に何百人か何千人かがそれを使うことが絶対に必要だからです。したがって、システムを作った人にとっては、最初の一定数のユーザーを確保することが極めて重要になるわけです。

 SNSであれば、いくつかのシステムが同時に存在して顧客を奪い合うことが可能でしょうが、勝者が総取りする場合も少なくありません。

 たとえば、電気自動車のプラグの形を考えてみましょう。筆者は業界事情に詳しくないので、以下は想像ですが、仮に各社が一斉に異なったプラグの形をした電気自動車を売り出したとします。充電スタンドは、すべてのプラグに対応した充電器を置くでしょうか。

 おそらく、それではコストがかかるので、最も売れている形のプラグに合わせた充電器だけを置くことになるでしょう。そうなると、電気自動車を買う人は、その形のプラグを備えた電気自動車を買うようになるでしょう。

 そうなると、他社もプラグの形を変える必要が出て来ます。それまでに作ったプラグとプラグ製造用の設備機械が無駄になるわけですね。もしかすると、勝った会社がプラグの特許を取っているかもしれません。そうなると、永久に特許権使用料を払い続ける必要が出てくるかもしれないわけです。

 そこで、最初にシェアを確保することが極めて重要となるわけです。たとえば、シェア2位の会社がシェア3位の会社に「わが社のプラグの設計図を渡すから、御社もそれを使ってくれ。そうすれば、シェア1位の会社よりシェアが高くなり、日本中の充電スタンドがわが社のプラグを使うようになるから」と頼むかもしれませんね。


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