2024年12月23日(月)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年8月12日

 カジノに入店すると、通常は店にいる客の多くは上機嫌です。それでもカジノが儲かっている理由を久留米大学商学部の塚崎公義教授が解説します。

(rez-art/gettyimages)

カジノに残っている客と帰った客のことを考える

 カジノに入店すると、多くの場合、店にいる客の多くは儲かって笑顔ですね。パチンコ屋でも同様ですね。それなのに、店は潰れるどころか繁盛しています。なぜでしょうか。それは、負けて帰った客が大勢いるからです。

 朝から1000人の客が来て、990人は負けて泣きながら店を出て行き、たまたま勝った10人だけが店に残って笑いながら遊んでいる、というのが通常のカジノやパチンコ店でしょう。

 そういう店に筆者が入店すると、つい「この店は客に優しそうだ。筆者でも勝てるかもしれない」と思ってしまいますが、991人目の負け客になる可能性の方が11人目の勝ち客になるより可能性が高そうですね(笑)。

 これは、今の瞬間に店の中にいる人は目に入りますが、帰って行った負け客は目に入らないので、筆者には全体像が見えておらず、それが失敗の原因だ、というわけですね。

 カジノやパチンコ程度であれば良いのですが、同様のことが学生の就職で起こりかねないので、心配です。起業して成功した青年実業家は、学生に向かって「夢を持て」と言います。「サラリーマンなどつまらないから、起業して私のような大金持ちを目指そう」、というわけですね。

 その時、学生が「起業した人は大勢いるが、成功した人は僅かだ」ということに気付けば良いのですが、なかなか気づかないでしょう。そうなると、起業すれば金持ちになれると錯覚して起業してしまう場合もあるでしょう。

 実際には、起業した人の多くは失敗して世の中の表舞台から去り、学生には存在さえも認識されていないのですが。

 筆者は、学生が夢を持って起業することを否定するものではありません。カジノやパチンコ屋で遊ぶことを否定するものでもありません。ただ、リスクとリターンの関係を正しく認識した上で、正しい判断をして欲しいと願っているだけです。

 「店にいる人を見たら、店にいない人のことを想像してみる」なんて、言うは易く、行うは難し、ですが。

 いない人のことを考える、という意味では、政党支持率のアンケート調査に関しても一言。平日の昼間に自宅の固定電話に電話すると、高齢者と専業主婦の意見ばかり集めることになりますので、要注意です。アンケートの結果を見る際には、平日の夜か休日に電話がなされたか、あるいは携帯電話にも電話したことを確認する必要がありますね。


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