2022年8月13日(土)

赤坂英一の野球丸

2020年3月9日

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東日本大震災でもあった開幕問題

 ここで思い出されるのが、2011年の東日本大震災の開幕問題である。このときは、いち早く延期を決めたパ・リーグに対して、セ・リーグでは巨人・渡辺恒雄球団会長(当時)が通常通りの開幕強行を主張し、一般世論の猛烈な批判を浴びた。東北で大勢の人たちが被災しているときに、プロ野球なんかやっている場合ではない、と。

 それはそれでもっともだったが、いざプロ野球が開幕すると、多くの被災者がテレビやラジオで野球中継を見たり聞いたりしていたのも事実である。当時、私が何度か被災地に取材に出かけたところ、とくに高齢者の多い地域の仮設住宅や特養ホームでは、プロ野球中継を楽しみにしている人が多かった。話を聞いた介護士はこう言っていたものだ。

 「高齢者になればなるほど、地震や被災地の話題は見たがらない。テレビがそういうニュースばかり放送するので、施設の娯楽室では誰もテレビの前に集まらなくなりました。お年寄りにはやっぱり、プロ野球や相撲が一番の楽しみなんですよ」

 あれから9年、私も含めて日本社会の高齢化はますます進んでいる。一向にコロナ禍の出口が見えないいま、無観客でもあえて開幕し、せめてテレビ、ラジオ、ネットだけでも、プロ野球選手がプレーしている勇姿を開幕から見せるべきではないか。原監督の言う熱く激しい「戦い」を、様々なメディアを通じて全国のファンの元に届けることが、日本国民にいくばくかの元気と勇気を与えるものと信じたい。

 オープン戦は1試合あたりの興行の粗利が数百万円程度だが、公式戦は2〜3億円に上ると言われる。それがゼロになるのに加え、経費分の赤字が生じるとなると、無観客での開幕に難色を示す球団も少なくないだろう。それを承知の上で、NPBと12球団には、大相撲春場所のように無観客で公式戦を行うことを前向きに検討していただきたい。

  
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