2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2020年3月15日

想定内のことに関しては完璧な対応をする日本
想定しないが想定外に強い中国

 先の福島原発の事故の時からなんとなく感じていることであるが、日本人は想定内ことについては完璧に準備して対応できるが、想定外のことが起こった時は、頭が真っ白になってしまうのか、どうも上手く対応できないという印象だ。

 一方、中国人といえば、そもそも細かい想定をするのが好きでないし、想定してもどうせどうなるかわからないという意識が強いので、綿密な想定はしないのが普通である。顕著に現れるのが、日本人が大好きな工程表を中国人は作りたがらないし、作ったとしても大雑把なものしか作らないのが普通である。そんな細かく想定しても明日はまた状況が違っているから無駄になるであろうというのは基本的発想である。

 極端な話、中国人は毎日を想定外の中で過ごしているので、想定外の対応はお手のもの、すなわち慣れている。それが今回の両国の対応の違いに現れている気がした。やはり、場数を踏まないと想定外のことが起きた時の対応ができないのではないか。ビジネスでも前例のない新しい試みに挑戦する人は毎日が想定外のことが起こりうるので場数を踏むことができるが、前例にこだわる政治家や官僚がそうした経験を積むことは難しいかもしれない。

意外と心配性で最悪のことを大雑把でも想定する中国人
最悪を想定したがらないとされる日本人

 上記で述べた細かいことを想定したがらない中国人の話と矛盾するかもしれないが、歴史にもまれた中華民族のDNAであるのか、中国人は、ビジネスでも常に最悪のことを考えて準備を怠らない面がある。契約の細部にはこだわらないが、例えば、契約不履行の場合にどのようなことが起きうるかしっかり想定しており、最終的に自分が困らないポジションを確保している場合が多い。反面日本人は細部にこだわりすぎて最悪の時のポジショニングが曖昧になってしまうことがよくある。

 今回のウイルス問題、中国がその対策を細かく想定していたとは思えないが、問題が発生してからはしっかりと最悪の事態を想定し危機管理対策を取ってきた感がある。一方日本では、問題が発生してからもなぜ最悪の想定した危機管理がなされていないのではないかという指摘が連日メディアでも言われているところ。

最後に

 このように両国の危機管理を見ていると、それぞれの文化背景、国民性といったものが良しも悪しくも反映されるものだということが改めに認識される。また、それは絶対的なものではなく、あくまでもそういう傾向になりやすいということであるので、冷静に対処すれば挽回の余地はいくらでもあるのだと思う。世界的なパンデミックが宣言されたところで、株価も下がり、これからが正念場であるが、日本人は日本人なりの対処の仕方で乗り越えるしかないのであろう。日本のリーダーたちにも、これを機会に是非勇気を持って最悪を想定し、危機管理体制を整えてもらいたい。リーダーシップを示す絶好の機会である。

 一足先に落ち着きを取り戻したという上海からは早速前向きな連絡があった。ある中国人の友人によると、今回の新型コロナウイルスの対策の一環として中国ではテレワークの有効性が改めて認識され、これから中国の生活と仕事の様式が大きく変わる可能性があると。別に渋滞を押して会社に行かなくとも十分仕事ができることが認識され、親が家にいれば子供も家でネット環境にて教育を受けることができる。これから5Gが本格稼働するに伴い、勤務形態だけでなく生産現場においてもIoTの進展が加速されるはずと。今年は中国の製造業にとっても一つの分岐点になるはずで、我々にとっても大きなチャンスになるはずと。

  
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