WEDGE REPORT

2020年4月1日

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小山 堅 (こやま・けん)

日本エネルギー経済研究所・首席研究員

1986年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、日本エネルギー経済研究所入所。英国ダンディー大学博士課程修了(PhD取得)。2011年より常務理事。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。

サウジの戦略、「3度の経験」 

 こうして産油国による「我慢比べ」が続けば、どの産油国も強い痛みを共有せざるを得なくなろう。そして価格が下がるほど、低油価の期間が長くなるほど、その痛みは大きい。ただし、その強い痛みは、産油国間の協調体制を新たに再構築するドライバーになりうる。サウジアラビアの狙いはまさにそこにあるのだろう。

 これまでに3回、サウジアラビアは油価下落を許容して、最終的な結果として産油国間の協調減産再構築を果たしたことがある。1985年末の「市場シェア奪回戦略」への転換、1998年のアジア通貨危機の最中におけるOPECジャカルタ総会での増産決定、そして2014年後半の需給緩和局面での油価下落許容戦略である。

 過去3回の歴史と比べて、今回の増産競争・価格戦争への転換においては、新型コロナウイルスの影響で国際石油市場が未曽有の供給過剰にあるという点が大きな特徴である。また、価格戦争の主要なターゲットが、方やロシアであり、方や米国(シェールオイル)という、国際政治・地政学上の巨大なプレイヤーである点も重要といえる。それだけ、サウジアラビアにとっては重要な、そして容易でない戦いであるといってもよいであろう。

米国シェールオイルへの影響

 生産コストの高い米国シェールオイルは、今回の油価暴落で大きな打撃を受けることになる可能性が高い。現時点では、20年の米国石油生産は前年比100万B/D程度増加するとの見方もあるが、今の低価格が続けばその拡大は抑制されよう。

 14年後半まで約3年続いた原油100ドル時代には、米国石油生産は大幅拡大を続けたが、油価急落を受けて、16年には前年比マイナスに落ち込んだ。その時の経験を踏まえ、シェールオイル生産企業の努力で生産コストは大きく低下したがそれでも相対的に高コストであることは変わりない。今後の米国の石油生産の状況からは目を離せない。

 低原油価格がガソリン価格低下をもたらすため、米国にとっては政治・経済的にプラスの面を持つ。しかし、米国の国力増大を支えてきた「シェール革命」の恩恵も無視できない。トランプ大統領は、3月19日に、適切な時期に産油国間の価格戦争に介入するとの趣旨の発言を行って世界が注目した。今後の米国・ロシア・サウジアラビアの動きは要注目である。

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