WEDGE REPORT

2020年4月1日

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小山 堅 (こやま・けん)

日本エネルギー経済研究所・首席研究員

1986年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、日本エネルギー経済研究所入所。英国ダンディー大学博士課程修了(PhD取得)。2011年より常務理事。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。

今後の国際石油市場をどう見るか

 新型コロナウイルス「パンデミック」と産油国間の価格戦争のダブルパンチで当面原油価格には下押し圧力が強く働こう。特に前者による需要減少の規模によっては、下押し圧力は非常に強くなりうる。

 弊所の最新分析によれば、新型コロナウイルスによる影響で世界経済減速が深刻化し、長期化するシナリオ(20年の世界経済成長率はマイナス0.7%)では、20年の世界の石油需要は前年比260万B/D(3.7%)減の9740万B/Dに止まる。世界の石油需要が減少するのはリーマンショック後の2009年以来、11年ぶりのこととなる。

 この場合の需要減少は、地域的には感染拡大の影響が大きい欧米、中国やアジアなどが中心になる。また、製品別には、人の移動や経済活動の低下で、ジェット燃料、ガソリン、軽油など、交通用燃料の需要減少が著しい。

 しかも、感染拡大が想定より深刻化し、経済の落ち込みがより大きくなる場合には、石油需要の低下はさらに拡大する。また、石油需要への影響の定量的な分析が困難な「都市封鎖」がより拡大・長期化すると、短期的には需要の落ち込みが劇的に拡大する可能性もある。

 この状況下で価格戦争が続けば、原油価格への下押し圧力は避けられないだろう。今後の新型コロナウイルス「パンデミック」の世界における展開と、産油国の価格戦争の帰趨がどうなるか、で原油価格は、低水準をベースとして大きく揺れ動くことになる。

 著しい低価格は、産油国経済を傷つけ、ひいては産油国政治や国内体制の安定を損なう要因となりうる。産油国情勢の不安定化・流動化は、中長期的視点で世界のエネルギー安全保障を脅かす問題となる。また、低価格は、本来必要なエネルギー部門への投資を阻害する要因にもなる。現在は著しい供給過剰であっても、いずれ景気が回復軌道に戻り、需要が拡大に向かう時、投資が不十分であると中長期的な逼迫を招く可能性も否定できない。

 原油低価格は、日本のような石油輸入国・消費国にとっては、プラスの面も大きいが、上述のような問題を通して、中長期的にエネルギー安定供給や安全保障を考える上での課題を作り出すことになる。著しい低価格は、著しい高価格と同様、決して望ましいものではない。現在が低価格であっても、「治にいて乱を忘れず」が重要である。

  
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