2024年4月27日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年4月3日

メルケルの人間性

 メルケル首相は独国民向けの演説で、人間性に富んだメッセージを発信しました。「感染者数は単なる抽象的な統計上の数字ではない。父親、祖父、母親、祖母、あるいは職場の同僚がその数字の背後にいる」と言うのです。

 さらに、メルケル首相は最前線で感染した患者と接触する医師や看護師のみならず、スーパーのレジ係及び棚に商品を補充する従業員に対しても感謝の意を表しました。スーパーのレジ係並びに商品補充の担当者もコロナ感染リスクが高いからです。危機的事態で働く国民に感情移入をして、「一人一人が重要である」と強調しました。

 ドイツが第二次世界大戦以来の深刻な状況に直面していると警鐘を鳴らすメルケル首相は、全ての国民に配慮を示すミュニケーションをとっています。つまり、個人的配慮と包含のリーダーシップを発揮しているといえるでしょう。

ジョンソンのルール厳守

 ジョンソン首相は新型コロナウイルスを「最大の脅威」と位置づけ、「目に見えない殺人者」と表現しました。このあたりはトランプ大統領と類似しているのですが、次の点が相違しています。

 「外出禁止令」に関して英国民がルールに従わない場合、警察が取り締まり罰金を科すと述べました。加えて、2人以上の公の場での集会を禁止しました。仮に集会が開かれれば、解散させると強い口調で語りました。

 ジョンソン首相はコロナ感染拡大を抑制するために、ルールの厳守を国民に強要しています。ジョンソン氏の言葉から外出禁止令を徹底的に実行するという固い意志をはっきり読み取ることができます。

 ただ、ジョンソン首相は外出禁止令が人々の暮らし、事業及び仕事に与える影響について理解を示しています。その上で、「家に留まる理由」を説明し、英国民全員でウイルス感染の拡散を食い止めるように国家的努力を求めました。新型コロナウイルス感染が確認されたジョンソン氏の危機的事態を乗り切るコミュニケーションの柱は、強制力によるルール厳守と全員参加です。


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