2024年2月29日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年4月3日

危機的状況下の非言語コミュニケーション

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者アルバート・メラビアン名誉教授によれば、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションは言葉(7%)、声のトーンやスピード(38%)及び表情や動作(55%)の3要素から構成されています。この「メラビアンの法則」に従えば、声のトーン並びに表情といった非言語コミュニケーションが93%を占めます。

 従って、効果的なメッセージを発信できるかは、言語よりも非言語コミュニケーションによるところが大きいといえます。

 ではコロナ危機に取り組んでいるトランプ大統領、メルケル首相及びジョンソン首相は、どのような非言語コミュニケーションをとっているのでしょうか。

 トランプ大統領は声のスピードと両手を素早く左右に広げる動作を組み合わせ、危機的な状態で「動的」リーダーの印象を与えています。新型コロナウイルスに立ち向かう勇敢なリーダーを意識してコミュニケーションをとっているのでしょう。

 それに対して、トランプ大統領と比較してメルケル首相の声のトーンは変化がなく、動作も少ない点が特徴です。トランプ氏とは対照的で、メルケル氏は「静的」リーダーを想起させます。

 ただ、危機的状況において「静的」が「動的」リーダーに必ずしも劣っている訳ではありません。メルケル首相の冷静な表情及び態度は不安と恐怖に駆られている独国民に安心感を与え、信頼を勝ち取る可能性が高いからです。

 一方、ジョンソン首相はトランプ大統領ほど両手を動かしませんが「動的」イメージを与えます。ジョンソン氏は3月23日(現地時間)、首相官邸から新型コロナウイルス対策に関するテレビ演説を行いました。その際、右手を強く握り、厳しい表情を浮かべながら英国民全員が「外出禁止」のルールに従えば、医療器具の備蓄を増やし、治療法の研究を加速させるための時間を稼ぐことができると議論しました。緊急性を動作と表情を効果的に使って、国民が理解し納得できる説明をしました。

 ちなみに、ジョンソン首相が布製マスクを着けていたら、英国民を説得できなかったでしょう。表情を使ってメッセージを発信できないからです。

お手本はジョージ・W・ブッシュ

 「私にはあなたたちの声が聞こえる」

 2001年米同時多発テロが発生すると、ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)はグランド・ゼロ(爆心地)の現場に駆けつけました。崩壊した建物の瓦礫の中で、ブッシュ大統領は右手に携帯拡声器を持ち、左手をニューヨークの消防士の肩にかけて「私にはあなたたちの声が聞こえる」と、他の消防士、救急隊員及び警察官に向かって叫びました。

 声とは「気持ち」です。つまり、「私と世界の人々は皆さんの気持ちを理解している」という共感のメッセージを発信したのです。

 新型コロナウイルスと最前線で戦う医療従事者からスーパーのレジ係や商品補充の担当者まで、彼らの気持ちを理解できるリーダーこそが、危機的状況下のリーダーといえます。

  
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