世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年4月20日

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 4月3日付のワシントン・ポスト紙で、元国務省欧州担当次官補のミッチェルが、今回の新型コロナウイルス問題を中国に対する米欧政策協調の良い機会にすべきだ、中国に抵抗するための共同戦線を作る必要があると述べている。ミッチェルの議論のポイントは、基本的にその通りだと思う。異存はない。米欧は中国に対してもう少しバランスの取れた、共同の政策を持つべきだろう。中国に対しては欧州のように楽観的でも良くないし、米国のように直線的でも良くない。現実を踏まえた、強い政策を取っていくべきだ。また供給網の多様化、TPP等の地域貿易取決め、支援が必要な国や地域(今回の事例でいえばイタリアやスペイン等)への支援なども重要である。

Igor Vershinsky/iStock / Getty Images Plus

 ミッチェルの中国観はなかなか厳しい。欧州の経済第一の対中観が問題なのはその通りだ。同時に、トランプ大統領の欧州観、同盟観も米欧関係の管理と中国への共同対応を難しくした。それが中国の欧州への影響力増大と分断に隙を与えた。関係国には米欧関係管理を巻き直して貰いたい。

 同時に、ミッチェルの「これらの措置は中国との関与を犠牲にする必要はない」との付言は重要である。良い意味での中国との競争(「批判的競争」というべきか)は必要であるが、全面的な対中ディカプリング(断絶)は不適当であるし、可能でもない。今や対中「関与」は悪い言葉になった感があるが、それでも関与は重要である。それにより中国の振る舞いを変えていく他ない。同時に西側やその他の国が連携、協力して中国に当たることだ。

 欧州がかかる対中共同対応に向かうかどうかは分からない。欧州で対中観が今後硬化する面はあろう。他方、一部の国(今回中国から支援を受けたイタリア等)では対中傾斜がなお一層強まる面もあるのではないか。

 既に議論されているように、今回のパンデミックは今後の国際秩序に大きなインパクトを持つ。しかし今後世界が多国間主義、国際主義に回帰することを期待したい。更にフランシス・フクヤマ等が言う独裁主義対民主主義といった議論も良く考えねばならない。習近平もトランプも教訓を学ぶことが望まれる。いずれにせよ、グローバリゼーションの時代に起きた極めてグローバルな問題であり、グローバルな対処が不可欠だ。しかし中国の初動体制の問題もあり国際協力が確立できず、今まで止む無く国家単位の対処が一義的になっている。今から国際協力体制を築くことには遅すぎる。それ故当面国家対応を第一に、必要で可能な場合国際対処をやっていくということであろう。

 自由貿易を守ることも重要である。先日、中国からドイツやフランスに向かうことになっていたマスクが米国向けに転換されたことや、カナダ等が米国の会社から契約済みのマスクの輸出が出来なくなったなどの事例が報道されている。問題だといわざるを得ない。トランプ政権になって国際貿易体制が損傷されていることに危機感を感じる。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なイランに対する貿易制裁も見直すべきだ。他方、最近クシュナーが中国側とアレンジしたといわれる医療用防護服などが中国から米国に到着したという。トランプの戦略なき対中貿易政策の皮肉である。もう一つの皮肉は、トランプの対中関税制裁のため米国による対中医療品、機器の輸入に負担が増していることである。

 対中戦略については、日本も米欧と歩調が取れれば良い。特に、同盟国の米国とは、安全保障上の共通戦略を早期に作成する必要があるだろう。新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐとともに、現に起きている尖閣諸島周辺での中国艦船の動きを含めた東シナ海での不穏な状況への対処もしなくてはならない。

  
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