2024年11月22日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年5月31日

 まず、ドメイン投票制度について考えてみよう。現在、50歳以上世代は、2010年時点で有権者の54%程度を占め、2050年には66%程度と過半数を超えると予測されている。さらに、実際に投票したものの割合では、第22回通常選挙のデータにより推計すると、2010年時点では62%程度を占める50歳以上の世代のウェイトは、2050年には72%程度にまで上昇する。

 このとき、同じ条件下において、ドメイン投票制度を導入すると、2010年の有権者に占める50歳以上世代のウェイトは44%程度と過半数を割り込む。確かに、若者世代の政治勢力の回復に一役買っている。しかし、2050年には57%程度とやはり過半数を超えてしまう。さらに、投票率を加味した場合は、2010年時点においてさえ有権者に占めるウェイトでは53%程度、投票者に占める割合では64%程度、2050年時点ではそれぞれ57%程度、64%程度と、制度導入前より高齢世代の影響力は弱まってはいるものの、若い世代の政治的な発言力を増すための改革としては意味をなさないことが分かるだろう。これは少子化が進行する結果である。

小手先の議論からの脱却を

 次に、平均余命投票制度である。これは、投票時点において平均余命分の投票数を与え投票させるものである。例えば、投票時点で各世代共通で平均寿命が80歳であるとすると、20歳には60票、60歳には20票与え、80歳以上には1票与えるのだ。

 この制度を導入した場合、2010年の有権者に占める50歳世代以上の割合は33%程度、投票者に占める割合は42%程度であり、2050年に至っても41%程度、50%程度、さらに2110年時点でも、それぞれ42%程度、51%程度と、世代間の政治勢力のバランスが拮抗することとなる。

 さらに、確かに投票時点では一票の価値の平等は保たれないものの、生涯を通して見れば一票の格差はそれほど大きくはならないという利点もあるし、そもそも若い世代の方がある政策に対してより長く責任を負わなければならないため、彼ら彼女らの意見を強く反映させた方が合理的である。

 このようにシルバー民主主義の潜在的脅威に対抗し、若い世代の権利保護を行うには、代表原理を含めた選挙制度の大変革が必要であるが、現在の選挙制度改革は小手先の議論に終始しており、徒に時間を浪費していると言えよう。

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