ロックダウンに外出自粛、新型コロナウィルスの拡大防止のため各国政府は大規模な経済の縮小を迫られている。そんな中で経済再開への鍵、と注目を集めているのが抗体検査だ。抗体とはウィルスに罹患し治癒した後に体の中に残される免疫のことで、これがあれば少なくともしばらくの間は新規の感染が防げる、とされる。抗体を持つ人から徐々に社会復帰させることで、経済活動を再開させるのが目的だ。
米国でも少しづつ広がりつつある抗体検査だが、自治体によって対応は異なる。例えば筆者が住むカリフォルニア州ロサンゼルス郡では、任意に抽出した人を招待制で検査しているが、こちらから検査を申し込むことはできない。ただ、隣のオレンジ郡では費用を支払いさえすれば誰でも検査を受けられる。そのため、今回車で小一時間かかるオレンジ郡のサンタフェ・スプリングスという場所まで抗体検査を受けるために出かけた。
検査を行っているのはARC Point Labという民間企業で、東海岸を中心にいくつかの検査ラボを展開しているが、西海岸ではオレンジ郡にラボを持っている。手順としてはオンラインで空いている時間帯にアポイントを取り、基本的な情報を入力する。費用は85ドル。
当日ラボに向かうと、入り口の前にテントが設営され、そこで受付を行う。病院に行ったときの問診票のようなものに記入し、検温の後中に入ってタブレットに自分の情報を入力、カードなどで支払いを行う。筆者はアポイントを取った上で来場したのですぐに受付してもらえたが、ウォークインも可能らしく、外には順番を待つ人が何人かいた。受付に聞くと毎日100~200人程度が検査に訪れるという。
しかし、ここで思わぬ問題が起きた。非接触型の体温計を向けられたのだが、筆者の体温が華氏101.4度(摂氏38.5度)と出たのだ。「あなた熱を感じていないの?」と聞かれたが、全く自覚症状はなかった。38.5度と言えば結構な高熱だろう。滅多に熱を出さないのではっきりとは分からないが、記憶にある限りそんな熱を出したのは中学生の時風疹に罹って以来。そのときは悪寒と体の痛みで起き上がるのも大変だった。車で小一時間もかけて検査に来るだけの体力が、そのような熱であるとは思えない。
抗体検査に来たつもりが実はコロナに罹っていたのか、自分はこれからどうなるんだろう、と一瞬ものすごく焦った。受付の女性は「ラボの中に入ってもらうのは無理だけど、あなたの車の中で検査だけはできる」と言うし、どうしよう、と迷っていた。ところが、筆者のすぐ後で検温した男性もまた高温の結果が出た。ちなみにこの日は30度に迫る夏日よりで、検温は屋外で行われていたため体温計は直射日光を浴びる状態だった。
結局「暑いから体温計が調子悪くなったのだろう」ということで、筆者も次の男性も無事に中で検査を受けられることになったのだが、この辺りの杜撰さには疑問を感じた。本当に体温計は壊れていたのか、それならば別の体温計を用意してきちんと検温すべきではないのか。筆者の前の人の時は問題なく、筆者の順番になった途端に体温計が壊れた、というのも何となく納得できないが、実際に38.5度の発熱があったとも思えない。