取材のために現場で大勢が「密」に
もちろん、これは何もスポーツの現場に限った話ではない。4日に神奈川県・川崎市の多摩川河川敷で約50人の人たちが緊急事態宣言などどこ吹く風でバーベキューを楽しんでいたというニュースが多くのメディアで報じられたのも、その具体例の1つと言える。
テレビ、新聞等の各社は「とんでもない話だ!」というトーンでぶっ叩いていたものの、実はこの模様を報じていたメディア側も撮影や取材のために現場で大勢が「密」になっていたという事実が一部の一般ユーザーのSNSによって明らかにされ「お前たちが言うな!」とネット上で〝ブーメラン状態〟になってしまったのだ。正直に言えば多くのメディアにはこうした傾向があり、スポーツの現場でも同じことが残念ながら起こり得る。
凝り固まった古い考えから抜け出せないメディアの中には、未だに机の前でふんぞり返った上司が平然と現場へ「夜討ち朝駆け」や「何が何でもの単独取材」を指示する社もあるようだ。個人情報保護法などプライバシーがこれだけ厳格化された世の中になっているにもかかわらず、さらにコロナ禍であろうとも他社とは差別化を図りたい一心で取材相手とのトラブルを招く危険性など一切顧みずに無理難題を現場に押し付けてしまう。
「新しい生活様式」がベースとなるであろう取材体制下において、こんな時代錯誤のことを強行したら間違いなくアウトだ。相手とは一層の距離感が必要となる今後、こういったメディアが仮に無秩序な暴走取材を働けば感染リスクも高まり、ひいては報道モラルのさらなる低俗化を招くことにもなりかねない。
繰り返すがコロナとの戦いで長期戦を覚悟しなければいけないのは、我々メディアも一緒である。情報を発信する立場であることを再認識し、襟を正すつもりで大きな変化を受け入れなければならない。前記した数々の問題点も「取材する側ならば別に気付かれないだろう」というなし崩しの考えは捨て去り、知恵を出し合って解決すべきである。少なくとも自らはそれを心がけていこうと思う。
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