Wedge REPORT

2020年3月30日

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 これはプロ野球界にとって深刻な致命傷となりそうだ。阪神タイガースの藤浪晋太郎投手、伊藤隼太外野手、長坂拳弥捕手の3人が新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査で陽性と判定され、大きな波紋を広げている。

(metamorworks/gettyimages)

 球団側が行った当初のヒアリングによると3選手は症状が出る前の14日、他の4選手と知人5人の計12人が集まり、知人宅で行われた「食事会」に参加したという。参加者の女性3人も発熱、呼吸苦、せきなどの症状を訴えて感染が判明したほか、選手と同居する家族1人にまでPCR検査の末に陽性反応が現れ、これまでのところ計7人のクラスター(集団感染)発生につながっている。

 阪神側の対応は正直に言って、お粗末極まりない。当初の発表では「食事会」の参加者が計12人とされていたが、集団感染が明らかになってくると29日になって慌てるように〝修正〟。改めて行われた選手へのヒアリングで当日の会合には後から加わった参加者もいたとの報告を受けたため、13人以上に膨れ上がることを認めた。

 今のところ阪神は4月1日までチーム練習を中止し、選手やスタッフを自宅待機とさせている。しかし会合の参加者数が二転三転するなど球団側が状況を明確に把握できていない以上、すんなりと練習再開に至るとは到底思えない。何よりもウイルス拡散につながる〝二次被害〟が勃発してしまうことも考えられ、非常に危険だ。

 他のチームにも影響が広がり、感染者の伊藤隼が出場した28日の二軍練習試合・対中日ドラゴンズ戦(ナゴヤ球場)では中日の選手、スタッフの計15人が会話や身体的な接触等を行っていたことが判明。中日側は念のため2選手に対して4月5日まで自宅待機の措置をとるなど対応に追われている。しばらくの間、球界全体を巻き込んだ混乱が続きそうだ。

 プロ野球界初となる新型コロナウイルスの感染者となってしまった藤浪ら3選手には気の毒だと思う半面で「プロ選手として余りにも自覚が足りなさ過ぎる」という気持ちも湧く。いや、事実が明らかになるにつれ、今は後者のほうが圧倒的に強くなっている。

 パンデミックとなり、日本政府や行政から再三に渡って「人が集まる場所へ行かないように」と自粛要請が出ている中で藤浪ら阪神の選手たちは実に13人以上も集まった「食事会」にのうのうと参加していた。この事実は無視できない。しかも行われた場所は密接空間となっていた可能性大の知人宅だ。社会的影響力の大きいプロ野球選手の立場であるにもかかわらず、このような軽率な行動に及んだ末に最悪のクラスター発生を招いたことは批判されなければ示しがつかない。

 神戸市の発表によると、会合に参加して感染した3人はいずれも「20代の女性」。そして催された日はホワイトデーだった。球団側は再調査でも「食事会」の行われた知人宅に複数の部屋があるため、正確な参加人数を未だに把握し切れていない。これらが、ますます〝怪しさ〟を深めてしまっている。

 球界内はもちろんのこと日本中から「知人宅の複数の部屋に別々になりながら濃厚接触。その上でクラスターが発生するほど多くの男女が集まって一体全体、何をやっていたんだ」などと奇異の目まで向けられる有様だ。ただ、そう思われても仕方がない。

 そして非常に驚かされたのは一部のメディアが藤浪の陽性反応の発表について当初、美談として扱ったことだ。球団側の説明によると、味覚と嗅覚の障害を訴えたことが罹患判明のきっかけとなった藤浪は「実名でこういう症状で検査を受けるということを言っていただいて結構です」と話したという。

 これまで新型コロナウイルスによる症状ではあまり報告事項として上げられていなかった味覚と嗅覚の異常について啓発を促すため、あえて実名での報道を望んだとのことだった。あるスポーツ紙は「ファンへの啓発を考え、実名報道を望んでいた」と持ち上げ、一部のメディアも藤浪が自ら名乗り出たことを「勇気」として称賛。こうした報道とともに当初はネット上で「藤浪は素晴らしい」などと大絶賛する書き込みが目立っていたが、これらを見て強い違和感を覚えていた球界関係者も実はかなり多くいた。

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