Wedge REPORT

2020年3月6日

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 球児たちは心中複雑かもしれない。第抜高92校野球大会(19日・甲子園)は史上初となる無観客試合での開催を目指すことが決まり、11日に実施の可否について最終決断が下される方向でまとまった。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、主催者側の日本高校野球連盟と毎日新聞社はスタンドを無人化してでも大会を極力強行させたい考えで一致し、その理由を「球児の夢の実現のため」(八田英二大会副会長)とした。

(bee32/gettyimages)

 だが、そこまでして大会を実現させなければいけないのだろうか。テニスの全国選抜高校大会実行委員会が5日、今月下旬に福岡市で開催予定だった大会を中止すると発表。これにより全国高等学校体育連盟の加盟団体が3月に予定していた24の全国大会は全て開催されないことになった。

野球だけが、なぜ許されるのか

 確かに高校スポーツで唯一、無観客でも大会実施の方針を固めている野球は同連盟に加盟していない。しかしながら世間では「野球だけが、なぜ許されるのか」という風潮に包まれている。高校テニスの大会中止が決まったことで高校野球界は一層の逆風にさいなまれそうな雲行きだ。

 強い風当たりだけではない。甲子園大会はテレビ放映権料が入らず、今春のセンバツを無観客とすれば3億円以上と言われる入場料や数千万単位のグッズ収入も見込めなくなる。スポンサーからどう頑張ってカネを引き出させたとしても限界がある。まず赤字覚悟でなければ、無観客での強行開催にゴーサインは出せないはずだ。それほど資金的なやり繰りで苦しい運営が待っていながら、あえて火中の栗を拾いに行こうとしているのはなぜか。

 事情通は次のように明かす。

 「大規模イベントの自粛要請を出している政府も、センバツに関しては何とか実施してほしい考えを持っているはずです。自粛を促しながらも、どこかで見切りをつけて日本国内でのイベント開催が問題ないことを証明させなければ、まず間違いなく東京五輪にも悪影響を及ぼすからです。だから政府内には今春、国内でも歴史が深く国民的人気と注目度の高いセンバツに無観客でもいいから開催の先陣を切ってもらいたいと密かに願っているフシがあるのです。イベント自粛の緩和を判断するタイミングを政府側は今月半ばとしていることもあって、19日開幕のセンバツに関しては主催者側の背中を押そうとしているのではないでしょうか」

 これで大会が盛り上がれば、新型コロナ渦に巻き込まれて疲弊し切っていた日本に活力を与えたスポーツイベントとしてセンバツの評価は一気にうなぎ上りになるかもしれない。主催者側としては先々のことを考慮すればハイリターンを得られる可能性があることから、逆に今春のセンバツ強行開催を絶好の機会ととらえていたとしても不思議はないだろう。

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