2024年12月12日(木)

Wedge REPORT

2020年3月6日

予断を許さない極限の精神状態

 さまざまな背景をひも解きながら邪推していくと、ますます「球児の夢の実現のため」という言葉がウソっぽく聞こえてしまう。ちなみに繰り返すが、あくまでも開催の可否が決まる予定日は11日。しかもたとえ開催が決まっても開幕前日の18日まで新型コロナウイルスの感染状況に目を配りながら危険と判断されれば急転中止も視野に入れ、臨機応変に対応していくつもりという。

 つまり球児や監督、コーチらスタッフ、チーム関係者は大会ギリギリまで「もしかして急に中止が決まってしまうかもしれない」という一切の予断を許さない極限の精神状態に置かれることになる。これは想像以上に辛いはずだ。中途半端な状態の〝蛇の生殺し〟が長々と続くことになるわけである。特にまだ純真無垢な高校生球児にとってはかなり難しい局面を強いられ、受け入れ辛い状況となるだろう。

 「いや、何とか大会が開幕したとしても国内で新型ウイルスの蔓延が酷くなってしまったら、そこで期間中に中止という事態につながることも十分にあり得るはずです。それにもし選手を含めたチーム関係者、あるいは大会主催者や報道陣の中から感染者が1人でも出れば、その時点でもセンバツは強制終了となるでしょう。

 もし選手が感染したら思い込みの激しい球児の場合、周りはそう思わなくても『自分のせいで大会が中止になり、仲間だけでなく他校のチームの夢を壊してしまった』と罪悪感にかられて精神的ショックを引きずってしまうことも十分考えられます。そうなってしまったら新型ウイルス感染による症状からの回復に務めさせるだけでなく、心のケアも必要となりそうです」(東日本の某代表校野球部部長)

 同様に今春のセンバツ代表校関係者からは「突然中止が決まったとき、子どもたちの精神状態が非常に心配だ」という声が噴出している。代表が決まった喜びから一転、大会中止になれば奈落へと突き落とされてしまう。まさに天国から地獄――。「球児の夢の実現」という言葉だけが独り歩きし、大会主催者たちの〝英断〟は知らず知らずのうちに当人たちを苦しめているような気がしてならない。

  
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