2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2020年2月12日

 深刻に受け止めなければいけない。新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響により、世界各地のアジア人差別に拍車がかかり始めていることだ。

 中国・武漢を中心に感染者が増大の一途を辿っていることから、中国からの入国を制限する国や地域は60を超えた。新型コロナウイルスに感染した中国人はついに4万人を超え、死者数もとうとう1000人をオーバーした。こうした現状に世界各地で中国人が〝保菌者扱い〟されて差別的な目を向けられてしまう残念なケースは増えつつあり、この流れによって日本も大きなとばっちりを受けようとしている。

 中国人と日本人の区別がパッと見では判断しづらい。そう思う西洋人は大半だろう。我々日本人からすれば言語や特徴などで見分けは比較的つきやすく容易だが、西洋人にとっては至難の業。欧米諸国に行けば、当たり前のように「日本人、中国人、韓国人、台湾人は、それこそパスポートでも見なければ国籍が分からない」という現地の人たちがたくさんいる。

 逆の目線で考えたら、それは無理のないことだと分かるはずだ。我々日本人だって余程目の肥えた人でなければ、一般層の大半が白人や黒人を見て即座に「あの人はどこそこの国から来た」と見分けをつけられるはずがない。

 そうした背景もあるからなのであろう。中国人と同じアジア圏内に属し、顔つきが非常によく似ている日本人も、さまざまな国において新型コロナウイルスによる〝風評被害〟を受けてしまっているという話を頻繁に見聞きする。

 米国のニューヨークでは先日、マスク姿のアジア系女性が男から「病気持ちのクソ女」などと罵声を浴びせられ、殴る蹴るの暴行を加えられるというショッキングな事件が発生した。新型肺炎などウイルスからの感染を予防するためにマスクを着用していたにもかかわらず、すでに罹患しているものと勝手に解釈されてしまったのだ。その上で一方的な言いがかりと因縁をつけられてしまったのだからたまったものではない。しかも被害者女性が犯行のターゲットとなってしまった大きな理由は捜査中のNYPD(ニューヨーク市警)の読み通り、やはりアジア系であったからだろう。

マスクをした家族。写真は上海(Robert Wei/gettyimages)

 これに関連する日本人の実例をつい最近も耳にした。所用で米国に出かけていたJOC(日本オリンピック委員会)の関係者が、こんなことを言っていた。

 「日本にいる感覚でマスクをつけながら空港やダウンタウンを歩いていたら、すぐに自分が白い目で見られていることに気付いた。『FU○K』と卑猥な言葉まで浴びせられ、身の危険も感じたのですぐにマスクを外しましたよ。欧米ではマスクをしていると病気を抱えているというイメージを持つ人が圧倒的に多い。

 だからインフルエンザが流行する冬場でも公共交通機関を利用していてもマスクをしている人はほとんど見かけません。それでも、この新型肺炎蔓延に対する警戒感が世界的に広がっていることで欧米でもマスク着用の習慣に少しは変化が出るのかなとも思いましたが、それほど変わっていないというのが正直な感想です。

 ただ、やっぱり現地で鋭い視線を向けられた一番の理由は自分が日本人、アジア系で、しかもマスクを着用していたからなのでしょう。そう思うと…。どうしても東京五輪は大丈夫なのかと思わざるを得ません」

 東京五輪の開幕まで、残り半年を切った。新型コロナウイルスの流行が沈静化し、終息宣言が出されるまでには明らかに時間が足りない。しかし東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京五輪・パラ大会組織委員会)の中からは「暑くなる夏にはウイルスの繁殖が抑えられているはずだから問題はない」とする楽観論も聞こえてきている。

 同委員会は新型コロナウイルス蔓延の悪影響で大会開催が危ぶまれているウワサについても強く否定し、対策本部を設置した上で「予定通りに行われる」ことも公式の場で明かした。


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