会場によっては閑古鳥が鳴いていることにも
だが、何とか開催に踏み切ったとしても問題は枚挙に暇がないほどに山積している。前出の関係者が指摘するように「マスク=予防」の観念を持つ我々日本人を含むアジア系と「マスク=病気」の考えが比較的に強い欧米諸国の人たちが、果たして東京五輪の開催国・日本で共存できるのかという疑問はどうしても湧く。前出の関係者は、こうも続ける。
「このまま新型コロナウィルスの流行にブレーキがかからなければ、東京五輪で日本側は非常に難しいかじ取りを強いられることになる。そもそもマスクをしているアジア系の人を嫌がる風潮が強まる中、日本に欧米から東京五輪を観戦するため数多くの人が訪れるのだろうか。そういう『?』も拭えません。
いや、もっと言えば、今年も酷暑が予想されるであろう夏場の日本では冬場と違ってマスクなど暑くて着用したくなくなる。そうなると、それはそれで逆に人によってはウイルスへの罹患率が高くなるかもしれないという恐怖心も湧き上がってくるでしょう。マスクを着用しようが、あるいはしまいが…。
欧米の人たちからみれば、新型肺炎の発症国となってしまった中国から近場である上に多数の人も往来し、ウイルスリスクの面で今の日本はどっちになったとしても『安全』とは言い切れない状況に置かれています。多くの人が集まる大会会場の近辺ではアジア系、欧米系など多国籍の観客が混在し、必然的に肩を寄せ合うぐらいのスペースになるのだから、ウイルスへの警戒感を強めて『行きたくない』と二の足を踏む人が増える可能性があることは納得できます。
大会組織委員会の中には夏場になれば暑さに弱いウイルスは死滅する方向へ向かうという見解も出ていますが、新型なのだからこれまでのデータや通例など当てはまらない。楽観視するのは余りにも早計であり、危険だと思います」
日本各地の観光名所では渦中に置かれている中国人だけでなく、欧米、その他諸外国からの旅行客も激減しているという。すべては新型コロナウイルスの流行による悪影響だ。東京五輪は開催が強行されても、いざフタを開けてみたら会場によっては閑古鳥が鳴いている――。そんな笑えない事態に陥ってしまうこともあり得なくはない。
最後に前出の関係者は「大会関係者の1人としては東京五輪を是が非でも成功させたい。ただ、もし自分が開催する側の人間でなければ…。今回ばかりは開催を見送るか、延期したほうが賢明なのかもしれない。あくまでも個人的意見ですが」と口にした。
それにしても、よりによって東京五輪イヤーに世界がこのような〝非常事態〟に直面してしまうとは正直想像もしていなかった。ここまで東京五輪へ向けた取材を続けている筆者としても、いい言葉が見つからない。
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