4月24日の開幕は大丈夫か?
確かに余り知られていなかった味覚と嗅覚の障害という症状をクローズアップさせたところは、世の中への啓発につながったかもしれない。それでもNPB(日本野球機構)では18日に行われたセ・パ両リーグ12球団の広報担当者会議で選手がPCR検査を受ける流れになれば、名前を公表し、結果についても明かすことがすでに内々で「既定路線」として提案されている。まだ正式な承認事項ではないにせよ、近々にも12球団の合意を経て、この実名公表が統一ルールになるのは時間の問題だった。
そう考えればプロ野球界の初感染者となった藤浪が名乗り出たことは、激賞されるべき特別な行動でも何でもない。ここまで持ち上げられるのは異様であり、気持ちの悪さも感じる。世界を見渡しても分かるように政治家や著名人、プロスポーツ選手がPCR検査を受けて陽性反応が出れば、すぐに実名公表する流れはスタンダードで至極当然のことだ。それなりの立場で社会的影響力があるにもかかわらず、むしろ公表しないことのほうが逆に大問題となるはずである。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、他の球団が外出禁止や自粛を促している中、なぜか阪神は規制を設けず選手任せの判断を貫いてフレキシブルにしていたことも裏目に出た。多くのメディアを前に揚塩健治球団社長が「今から思えばもう少し厳しく外出禁止というような形で臨んだ方が良かったという反省がございます」とこうべを垂れたのも、もう後の祭りだ。
ちなみに阪神以外にもパ・リーグ球団の主力選手がこのご時世に夜の東京の街で感染リスクの高い「合コン」に興じ、近日発売の写真週刊誌に激写されたとの情報がある。
今も世界各国は史上最凶ウイルスとの出口の見えない戦いを強いられ、行動制限が行われている真っただ中。しかしながら日本のプロ野球界は悪い意味で「浮世離れ」していると言わざるを得ない。いずれにしてもNPBと12球団が目指す4月24日の開幕は常識的に考えれば、非常に厳しいだろう。
諸々の判断の甘さや危機意識の欠如によって現役選手たちからクラスターを作り出し、日本中を不安に陥れてしまった責任は残念ながら軽くないはずだ。このまま空気を読まずにNPBや12球団の経営者たちは4・24強行開幕へ本気で踏み切るつもりならば、世間から猛反発を食らうことを覚悟しなければいけない。
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