あの挫折の先に

2012年6月11日

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夏目幸明 (なつめ・ゆきあき)

ジャーナリスト

1972年、愛知県生まれ。愛知県立豊橋工業高校から早稲田大学へ進学、卒業後、広告代理店に入社し、その後、雑誌記者へ。小学館『DIME』に『ヒット商品開発秘話 UN・DON・COM.』を、講談社『週刊現代』には、マネジメントの現場を描く『社長の風景』を連載。ほか、明治学院大学講師をつとめ就活生の支援を行う。『資格の学校TAC』では、就活生と一緒にエントリーシートを書き、面接練習を行う講座を持つ。
執筆記事:「社長の風景」(現代ビジネス)、「火力発電所奮闘記」(『VOICE』)、「ビジネスの筋トレ」(『フレッシャーズ』)、「就職活動セミナー」(『資格の学校TAC』)

 彼は入社直後、コンクリートの研究に従事するよう言い渡され、同時に“2年後には先輩の課長代理がいなくなるから、その時には代わりが務まるようになってほしい”と言われた。

コンクリート1立方メートルあたりのCO2排出量
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 しかも、仕事を任され“その中から学んでほしい”という教育方針だった。コンクリートにどんな素材を加えると強度がどの程度高まるか、といった研究の方針と期限を伝えられ「進め方は自由」と任されたのだ。

 「この時“できません”と言わなかったことがよかったんです。のちの研究にいい影響を及ぼしたと思っています。“無理”と言っていたら、自分ができる仕事のキャパシティはいつまでも増えないものだと、あとで振り返ると感じますね」

 この時、上司は「キャパシティを増やすなら、3年目までが勝負」と声援を送ってくれた。こうして、取違の挑戦が始まったのだ。

“自分が社長ならどうするか”と考え、多忙に対処せよ

 研究は、実験のデータを集め“ならこうすれば?”と考えることの繰り返しだ。彼はそのうち多忙を極め、次第に、仕事が期限に間に合わないかもしれない、という状況に追いつめられた。

 この時、彼は上司に現状を話し、相談にのってもらった。食事に連れて行ってもらい、聞いた言葉が忘れられない。

 「自分が苦しい時、どう振る舞うとよいか、いい判断基準がある。自分が社長だったらどうするかを考えるといい。そもそも“よい会社”とは、どれだけ多くの社員が“自分が社長だったらどうするか”と考えて仕事をしているかによって決まるものだ」

 その言葉を聞いた瞬間、振る舞い方が決まった。

 「1年目の社員といえど、自分が主体になって目的を達成するべきだと思ったんです。わからないところがあれば人に聞いてもいい。助けを求めるべきことがあれば、周囲に頼んでもいい。事によっては、先輩に仕事を頼んでもいい。でも、目的を達成できないことだけは避けよう、と考えました」

 この時、彼が思い至ったのは“人に任せられる仕事は全部、人に任せよう”ということだった。

 「仕事はすべて、“単純作業”と“考えること”にわけられます。その中の単純作業は人に振れるんです。先輩に相談すると、優秀な派遣社員の方にお願いすることができました」

POINT
若手のうちは「責任感」が足かせになる場合がある。上司に仕事を任され、無理と思った時“先輩に頼れない”“これ以上の予算は使えない”などと縮こまり、結局、任された仕事を果たせない若手が多いのだ。
仕事を任されたなら、主体性を持ち“目標達成のためなら上司を使う”位の覚悟であたるとよいはずだ。上司に面倒をかけた時は多少、気まずい思いもするかもしれないが、結果、目標が達成できれば、その方がよほど自分の将来に肯定的な影響がある。
先輩に仕事をお願いする際のポイントは、自分の考えを、簡潔かつ論理的に説明すること。取違氏は「毎日15分かけて、自分の考えをまとめ、紙に書いてからお願いしていた」という。

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