韓国の「読み方」

2020年5月22日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

慰安婦問題の構図は変わらない

 ただし、今回の事態を過大評価はしない方がいい。

 これによって正義連や尹氏の信頼が大きく傷つき、影響力に陰りが出ることは確かだろうが、そのことが外交にまで影響を及ぼすとは考えづらい。タブーが崩れた原因が尹氏の政界進出に起因するものであるなら、その影響は主として国内的なものにとどまるだろう。

 韓国の政界では次から次へと争いの種が出てくるので、何か新しい話題が出てきたら急速に関心が薄れる可能性すらある。5月末に新しい国会議員の任期が始まり、2022年3月の次期大統領選へ向けた政界の動きが本格化してくれば、韓国社会の関心はそちらに流れていく。

 そもそも批判の対象になっているのは正義連と尹氏、それも端的に言ってしまえば「彼女たちとカネ」という問題である。慰安婦問題そのものへの韓国社会のスタンスが変わったわけではないし、崩れたタブーも少なくとも現時点では「正義連がアンタッチャブルでなくなった」というレベルである。国際社会の視線を含め、慰安婦問題を取り巻く基本的な構図は何も変わっていない。

 それに文在寅政権にとっての最優先事項は、次期大統領選で与党候補を勝たせることだ。対外政策の中では対北政策が一番で、それに関連して対米関係、経済的に依存する中国との関係が続く。対日外交はその次で、しかも喫緊の課題は日本側から見れば徴用工問題、韓国側から見れば日本の貿易規制である。慰安婦問題についての文政権の立場は、2015年の合意では解決していないけれど、合意を破棄したり、再交渉を求めたりはしないという中途半端なところで2年以上も止まっている。存命の元慰安婦が少なくなり、いよいよ時間との戦いであるはずだが、何かが動くようには見えない。その状況もまた、今回のスキャンダルの影響を受けてはいないようだ。

  
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