オトナの教養 週末の一冊

2020年3月8日

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 「歴史的にみると、今の韓国は最強」。毎日新聞外信部長で『反日韓国という幻想』を上梓した澤田克己氏は語る。経済協力開発機構(OECD)によると、購買力平価で比較した2018年の実質国内総生産(GDP)は世界12位で、1人あたりでは日本を抜いた。サムスンやLG、現代自動車といった世界展開する企業もあり、潘基文(パン・ギムン)氏が国連事務総長を務めるなど国際機関で活躍する人材もいる。最近では、映画『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞で外国語の映画として初めて作品賞を受賞した。数十年前に今の韓国を想像した日本人はほとんどいなかっただろう。

(TanawatPontchour / gettyimages)

 先進国となり、国力を伸長させ、新たな国際秩序を志向して動いている、という韓国を日本は見えなくなっている。日本と韓国が相互理解できなくなっている要因を本著は紐解いている。「日本と中国の間にある朝鮮半島という立ち位置から、1990年代以降、変わってきている。世界に認めてもらい、それに見合った扱いを受けたいという思いが韓国にある」と解説する。

 本著は1965年の日韓国交正常化以降の韓国の変化を概説する。冷戦時代は、朝鮮戦争で全土が焦土となり、最前線として緊張が強いられてきた。中国やソ連(当時)をはじめとする社会主義圏とは敵対せざるを得なかった。しかし、冷戦が終結へ向かう中で「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を果たし、民主化も達成した。

 こうして韓国が〝変化〟していく中で、外交相手も大きく変わっていった。冷戦時代は「韓国にとっての世界は日本と米国」と言えるほど、日米との関係が最重要案件だった。冷戦が終結し、中国とソ連(ロシア)が足され、4か国に。韓国が経済成長を遂げるとともに、世界へと広がっていった。韓国の貿易相手国としてのシェアは1970年が日米で7割を占めていたところから、91年以降は5割を切り、2018年は2割を切っている。

 朝鮮戦争後の1950年代には世界でも最貧国の一つとされてきた韓国が発展途上国の雄を経て、先進国の一角へと頭角を現すようになり、経済での日本への依存度は低くなった。これに加えて国内の民主化が進み「正しい歴史」というのを追求する動きが強くなった。これにより、従軍慰安婦や元徴用工の問題が再熱してきているという。また、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄の論調が盛り上がるのも、日本との国力差が縮まったことによる民族ナショナリズムの高揚と「自主外交」を進めたいという願望の現れだと主張する。これは、文在寅(ムン・ジェイン)政権独自の姿勢ではなく、保守派と進歩派ともにあるという。

「国際的な立ち位置に見合った扱いを受けたいという思いは理解できる。ただ、洗練されたやり方で行うべき」と澤田氏は日韓で軋轢が起きている要因を解説する。「65年に基本条約を結んで国交正常化した当時、日本と韓国の外交力・国力の差は今とは比べ物にならなかった。だから不平等な条約だったという悔しい思いが韓国側にはある。ただ、それを修正したいと考えたとしても、国家間合意の重みを無視して自分たちの思いをぶつけてくるだけでは話にならない」と韓国側の交渉手法再考を呼びかける。

 また、本著では、日本と韓国でともにベストセラーとなった『反日種族主義』を、進歩派への強い敵意のもとで生まれた著書で、史料の一方的な解釈が目立つと批判している。特に、東南アジアの慰安所で働いた朝鮮人男性の日記については、良い状況だけを取り上げて悪い状況には言及していないのだ。詳細は本著を読んで、各自で検証していただきたい。

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