2024年2月29日(木)

From LA

2020年6月1日

「黒人は不当に差別されている」という意識 

 では、なぜ暴動に発展するほど人々は怒るのか。根底にあるのは「黒人は不当に差別されている」という意識だろうが、この点にもやや疑問を感じる。30年米国で暮らす筆者が感じる限り、米国の「一等国民」は間違いなく白人だ。ここにはユダヤ系なども含まれる。社会的なヒエラルキーを考えると、その下に位置するのは黒人だと思う。さらにその下にアジア系、ヒスパニック系がおり、最下層にいるのは間違いなく不法移民だと感じる。

 アジア系はそれほど差別されていない、社会的ポジションも上だ、という意見があるかもしれない。しかし黒人から見ればアジア系は確実に下だ。ニューヨークの地下鉄で起きた黒人によるマスクをしたアジア人女性への暴行事件は世界中に発信されたが、いま米国で起きているアジア人差別の加害者は黒人である確率が非常に高い。92年のロサンゼルス暴動でも、黒人が襲撃したのは韓国人街だった。

 白人により抑圧された黒人が、それより弱い立場であるアジア人を攻撃する、という構図は実際に存在する、と思う。筆者自身、理不尽に黒人から攻撃を受けたことは何度もある。もちろんすべての黒人がそういう人々ではないし、人種よりも個人差が大きいのは確かだろうが、全体として見れば黒人自身にも自らの立ち位置に不満を唱えるだけではなく改善すべき点はある。オバマ大統領の誕生で黒人の意識に変化が訪れると期待していたが、実際はそれほど社会の中での黒人の位置が変わらなかったのも惜しい出来事だった。

 人々の怒りや、コロナによる社会不安から来るストレス、経済的な打撃も加わり、さらにトランプ大統領の敵対的発言と州兵の派遣が拍車をかけ、暴動はいつ沈静化するのかわからない状況になっている。しかし、暴力に暴力で応えることは正しいのか。

 セントラルパークの事例のように、世論を味方につけて収まることもあるのに、今の状況は興奮と略奪を正当化しているかのように見えてしまう。米政府のあまりにも杜撰なコロナ対策と相まって、国がますます分断していくことが、米国の衰退につながることを懸念せざるを得ない。

  
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