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2020年6月1日

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暴動により破壊されたロサンゼルスのアップルストア(REUTERS/AFLO)

 筆者がこれを書いているのは5月30日夜、全米の様々な都市でジョージ・フロイド氏の死に対する抗議デモが続いている。中心となり暴動が起きているミネソタ州ミネアポリスでは州兵が派遣されデモ隊と衝突、何人かの犠牲者も出そうな勢いだ。筆者が住むカリフォルニア州ロサンゼルス近辺では5月26日にダウンタウンでフリーウェイを占拠するデモが起き、以来4日連続で各地で散発的なデモがあり、パトカーに放火するなどの事件が起きている。

 警察官の黒人への暴力が暴動に発展した、最も有名な事例は1991年のロドニー・キング事件だろう。警官による暴行を受けた、として黒人差別の象徴となり、翌92年にはロサンゼルス暴動が起きた。次に起きた暴動は2014年、ミズーリ州ファーガソンで18歳のマイケル・ブラウン氏が警官により射殺された事件が発端となった。そして今回のフロイド事件はコロナウィルスによる社会的不安も背景にあり、全米にまたがる大規模な暴動へと発展する可能性もある。

 これに先立ち、日本でも報道されたニューヨークのセントラルパークでの事件があった。バードウォッチングをしていた黒人のクリスチャン・クーパー氏が、禁止されている犬の放し飼い散歩をしていた白人女性アリス・クーパーさんに注意し、女性側が警察に通報した、というものだ。

 またミネアポリスではオフィスビルに付随するフィットネスセンターで白人男性が黒人のグループに「不法にジムを利用しているのではないか」と言い寄り、その場面をスマホ動画で撮影されたという事件もあった。

 この2つの事件では、どちらも白人側に非があり、当事者は十分な社会的制裁を受けている。セントラルパークの女性は職場を解雇され、飼っていた犬は保護団体に引き取られ、現在もSNSなどで脅迫を受けている。

 オフィスビルの男性はビル運営会社から賃貸契約を解除され、同じく様々な非難を浴びている。偏見に基づいた根拠なき差別は、通常このように正されており、感情面はともかくも「黒人だから不当に貶められる」というのは米国社会では受け入れられないものとなっている(しかもこの2例の場合、バードウォッチャーのクーパー氏はハーバード大卒のエリートであり、見た目も物腰も穏やかだ。オフィスビルの黒人グループは年齢こそ若いがベンチャー企業を立ち上げた有望株でもある)。

増加する職務中に殺害される警察官

 しかし暴動に発展した3つの例の場合、言葉は悪いが当事者の黒人はすべて犯罪の容疑者である。警察側が過剰に反応したのは確かだが、警官側にも恐怖心があったのは事実だろう。特にジョージ・フロイド氏は身長2メートルの巨漢であり、首に膝を乗せて抑え込んでいた警察官には「力を緩めたら反撃される」という思いはあったと推測できる。FBIの報告書によると、1980年から2018年の間、職務の遂行中に殺害された警察官は年間平均で85人にも上る。しかも2010年以降は11年を除いてはその数は年間150人以上となっている。

 この問題を掘り下げると米国の銃社会の弊害に行き着くが、とりあえず今回はそこには触れずにおく。前提として「警察官は常に職務中に殺害されるストレスを抱えており、時に過剰反応してしまう」ことがあり、黒人でなくとも警察官の行き過ぎによる被害者というのは出ていることを指摘しておきたい。その上で、フロイド氏を死に至らしめた警察官デレク・ショービンは第三級殺人罪で起訴されており、社会的正義は一応遂行されている。

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