2024年12月22日(日)

From LA

2020年5月12日

解禁されたハイキングコースを楽しむ人々(REUTERS/AFLO)

 カリフォルニア州は経済再開に向けた4つのステップを発表し、その2段階目となるステップ2が5月9日より解禁された。これまで自粛対象だった書店、花屋、スポーツ用品店、衣料品販売店、自動車ディーラーなどが新たに営業再開を認められ、ハイキングコース、散歩用のトレイル、公園、ゴルフ場もオープンした。

 しかしこれは決してコロナウィルスが鎮静したために取られた措置ではない。カリフォルニア州の感染者はサンフランシスコ、サンディエゴという2つの大都市近辺では減少傾向にあるものの、最大の都市であるロサンゼルスではまだ増加傾向にある。

 5月3日~10日の1週間で、ロサンゼルス郡の新たな感染者数は平均して1日800人弱。5月10日現在のカリフォルニア州全体の感染者数は6万7875人、うちロサンゼルス郡が3万1703人と半数近くを占めている。

 このような状況でなぜカリフォルニアは経済再開に向けて動き出したのか。答えは一言にすると「これ以上の経済負担に耐えられないから」である。ロサンゼルスよりも感染者数の少ないサンフランシスコは、とりあえず5月9日の再開を見送り、しばらく自粛を続けている。しかしロサンゼルスはこれ以上自粛を続けることがほぼ不可能になっている。

 5月の時点でロサンゼルス郡が抱える財政赤字は540億ドル、という史上最高額となっている。ガルセッティ市長が連邦政府からの経済刺激対策給付金とは別に低所得世帯に1500ドルを配る、などのバラマキ政策を行ったせいもあるが、元々2028年の五輪開催に向けて市の中心部などの再開発を行っていたこと、ホームレス対策にも費用がかかっていたことなども理由として挙げられる。もちろん休業要請による税収の大幅な減少もある。

 また、1カ月以上もロックダウンを続けているにもかかわらず感染者数が減らないのは明らかに政策ミスであり、そもそもロックダウンは必要だったのか、という抗議行動もある。これはロックダウンしていなかった場合さらに感染爆発が起こっていただろう、という意見もあるし、一概に何が正しいのかを見極めるのは難しい。しかし人々が大きな不満を抱え、爆発寸前なのも確かだ。市長の自宅前では毎週末のように抗議デモが繰り広げられ、「経済再開か死か」というプラカードを掲げた人々が抗議の声を挙げている。

 もう一点、今後の市や州に大きな負担になりそうなのが、各地で起きている集団訴訟だ。米国人の訴訟好きは有名だが、ロックダウンに対する「憲法違反」訴訟、州政府が不法移民にも援助を行ったことに対する「権力乱用」、ロサンゼルス市がホームレスに十分な保護を与えていない、とする人権団体の「人権保護」など、ありとあらゆる訴訟が起きている。

 中でも深刻なのは大学生による大学への学費返還を訴えるものだろう。大学は3月以降は休校状態、現在もオンラインでの講義のみ行われている。寮はすべて閉鎖となり、学生は自分で住居を確保する必要に迫られた。UCLA、バークレーといった世界的に人気のある大学を抱えるカリフォルニア大学に対しては、学生らから「学費の一部である施設使用料などを返還すべき」という訴訟が起こされている。

 ただでさえ高い学費を支払っているのに、オンラインのみの授業ならば意味がない、というものだ。州立大学や一部私立大学でもこれに追随する動きがあり、このままでは大学システムが崩壊してしまう可能性もある。そもそも9月にどれだけの学生が実際に入学するのかも予測できない状況が続いている。


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