2022年6月30日(木)

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2020年6月21日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

【鈴木大輔(すずき・だいすけ)】
1973年千葉県館山市に、鮮魚店の3代目として生まれる。東京でイタリアンのシェフを務めていたが、父親の病気をきっかけに家業を継ぐ。物流網を整備して、事業を4倍に拡大させた(写真は、富浦漁港)

 千葉県館山の「まるい鮮魚店」を経営する鈴木大輔・まるい社長の朝は早い。午前4時半には3台持つスマートフォンを使って情報収集を始める。旧知の漁船の船長や漁港関係者に電話して、その日の水揚げを聞き出すのだ。

 鈴木さんは毎朝、南房総の12の漁港で魚の買い付けをする。「こっちの漁港で大量に上がっている魚が、別の漁港ではまったく水揚げがないということもある。前の日の価格を基に入札しても絶対に買えないんですよ」と鈴木さん。入札が始まる前に、いかに情報を集めておくかが勝負なのだという。

 漁港に水揚げされると、それぞれの漁港に出向いた社員が情報を送ってくる。LINEなどSNSで送られてきた魚の写真を見て、札を入れる金額を決め、次々に社員に指示を送るのだ。

 開札時間になると、結果が黒板に次々と書き出されていく。丸に「イ」の字が次々に書き込まれていく。「まるい」が落札したことを示す。毎朝、数百万円。多い日には1日で1000万円の魚を落札することもある。

 「仕入れなければ商売が成り立ちませんから」と鈴木さんは笑うが、仕入れた魚を売りさばけなければ、仕入金額が大きいだけに、リスクも大きい。「博打(ばくち)みたいなところがあります」とは言うものの、実は鈴木さんには確実な「販路」があるのだ。

自前の物流網を開拓

 「南房総朝獲れ当日便」──まるい鮮魚店の事業を一気に拡大するきっかけになった「販路」がそのひとつ。

 1997年12月に開通した東京湾を横断する高速道路「東京湾アクアライン」は房総半島の先端にある館山と東京の時間距離を一気に縮めた。どんなに急いでも車で2時間半かかっていた道のりが1時間あまりに短縮したのだ。これを商売に生かせないか。

 鈴木さんは魚屋の3代目。父の日東士さん(現・会長)の代までは商店街の普通の魚屋だったが、父の病気をきっかけに家業を継ぐことになって仕事の仕方を一変させようと考えた。

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