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2020年6月21日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 ある日、高級魚のアカムツを持って銀座の寿司店をいきなり訪ねる。裏口から声をかけると板前に怒鳴られた。「30年近く築地の魚を見ているんだ」。門前払いかと思われたが、魚を見るやその板前の目の色が変わった。

 「館山は魚種が豊富で35種以上。いろいろな魚が仕入れられる。それを新鮮なまま届けられればお客さんに喜んでもらえると確信したんです」

 それまで軽自動車だけだったところに、自前で1トン半のトラック購入を決めた。「親父とは大げんかでした」と懐かしそうに振り返る。15年ほど前のことだ。

 アクアラインを渡った羽田空港にあるヤマト・グローバル・エキスプレスに掛け合うと午前11時半までにセンターに届ければ、1都3県の飲食店に16時までに届けてくれるという。こうして「自前の物流網」を持ったことで、まるい鮮魚店の商売は一気に広がった。今では15台のトラックを持ち、元旦を除く364日、得意先店舗に魚を運ぶ。冷凍庫と水槽を設置した特殊車両も3台ある。

 3月初旬の取材当日、撮影を予定していた波左間漁港は、朝からの雨で海が時化(しけ)て、水揚げがなかった。そこで急遽、富浦漁港に向かうと、ここでは金目鯛が豊漁(前ページ写真)。ここでも自前の物流網が12の漁港をつなぐことで、お客さんからの注文に「欠品」が出ない体制を整えている。

きれいで臭くない職場

 まったく営業活動はしていないが、評判を聞きつけた店舗との契約が増え続けてきた。今や862店にのぼる。その中から毎日150店舗ほどに出荷する。大手の居酒屋チェーンなどへの出荷も増え、「朝獲れ鮮魚の刺身」など看板メニューの材料として使われるようになった。飲食店が欲しい魚を注文し、それを受けて出荷できるのも、魚種が豊富な館山ならではだという。

緊張感を持って行われる朝礼

 もちろん、産直配送だけで大量に仕入れた魚をすべて消化できるわけではない。仕入れた魚の一部は豊洲市場に卸したり、干物などに加工する。こうした商品はホームページを通じた個人通販で売りさばく。

 通販のカギを握るホームページの制作にも力を入れてきた。「まるい鮮魚店」のホームページには「まるい水族館」というページがあり、館山の豊富な魚種を紹介している。ブログなどSNSでの発信も心がけている。

 個人向け通信販売では、「地金目鯛しゃぶしゃぶ用スライス」「天日干し地魚干物セット」「おまかせバリュー鮮魚セット」「活伊勢エビ」「地サザエ」などが人気商品だ。昨年秋に南房総を襲った台風19号の被災地支援で館山市へのふるさと納税が大きく増えたが、その返礼品として人気を集めたのが「まるい鮮魚店の干物」だった。製造が間に合わず、一時受付を停止したほどだった。

写真左:出荷用に、うろこ取りの作業も行われる
写真右:明るい雰囲気で、かつテキパキと発送作業を行う従業員の皆さん

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