2022年8月8日(月)

VALUE MAKER

2020年6月21日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 業容は大きく拡大した。父から社長を引き継いだ時には1億7000万円ほどだった年商は今では7億8000万円。従業員も26人にまで増えた。もともとは魚屋を継ぐのが嫌で東京に出てイタリアンのシェフをしていた鈴木さん。「魚臭くて、寒くて、冷たいのが嫌だった」と言う。「新しい加工場は清潔にして臭(にお)いを抑え、快適に働ける職場環境に変えてきた」。従業員もイキイキ働く、地元で活気のある数少ない企業に育ってきた。「まさか、こんなに変わるとは」と父の日東士会長も舌を巻く。今、豊洲市場の魚類卸会社で修業している孫が、跡を継ぎに戻ってくるのを心待ちにしている。

鈴木さん親子

売り切るためのアイデア

 鈴木さんの「地元館山の魅力を売り出す」アイデアはどんどん広がる。

 もともと「町の魚屋」だったころの店舗は3階建てに改築。1階には干物や真空冷凍品などを置く店舗を開いた。また、2階には完全予約制の料理店「佐助どん」を開いた。実は地域の人たちも豊富な種類がある地魚を食べる機会は少ない。特に高級魚になればなるほど、東京へ出荷され、地元の人の口には入らない。

「佐助どん」で提供される金目鯛の煮つけ

 「地元の良いものを地元の人たちに知ってもらいたい」というのがお店を作った理由だ。1室限定のため、なかなか遠方から訪れる観光客には対応できない。そこで、観光客がやってきても気軽に食事や買い物ができる店舗をすぐ近くに建設する計画だ。すでに土地を確保しているが、台風被害で建設計画が遅れており、2021年の夏にはオープンしたいと言う。

 鮮魚をその日のうちに届けることで、当然のことながら付加価値は増す。また、加工品や料理店も当然、鮮魚よりも高い価格で販売できる。「それもこれも自前の物流網・販路を確保したからだ」と鈴木さんは言う。販路があるからこそ、思い切ってリスクを取る仕入れができるわけだ。だが、最も重要なのは、館山の魚の魅力を知ってもらうこと。ファンに良いものを届け続けることで自然と顧客が増え、事業が大きくなっていく。

写真=湯澤 毅

  
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◆Wedge2020年4月号より

 
 

 

 

 

 


 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 

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