2022年12月4日(日)

Wedge REPORT

2012年6月21日

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 昨年7月8日に国が都道府県などに示した新たな通知がその根拠だ。このなかで国は、これまで想定される津波の高さを計算する際には、過去の津波の痕跡や歴史文献などをもとに行っていたことを見直し、十分なデータが得られない場合には、シミュレーションによってデータを得るよう指示している。

岩手県沿岸で進む「万里の堤防」計画
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 この通知を受けて岩手県が昨年10月に県内24の海岸ごとに設定した防潮堤の高さは、平均12メートル(図)。これほどの高さになったことについて県の担当者は、「国の通知と同時期に示されたシミュレーションの手引きどおりに、過去百数十年に起きた地震のうち最大の東日本大震災に次ぐ明治29年の明治三陸地震のときの津波を再現したら、この高さの防潮堤が必要だということになったのです。国の基準に従ったまでで、誰が設定しても同じ結果になります」と、当然のことのように話す。

 日をおかずに大槌町は、県がまとめた設定をもとに防潮堤建設計画の住民向け説明会を始めた。住民からは、「なぜ防潮堤がこの高さになったのか。これでは海がまったく見えない町になってしまう」、「防潮堤建設より先に住むところを確保してほしい」などと不満が続出したにもかかわらず、町は昨年末に高さ14.5メートルの防潮堤を建設すると決定した。

 大槌町の担当者は、「県が設定した津波の高さを説明しただけ」とするが、防潮堤の建設に疑問を投げかける東梅守町議は、「町は『防潮堤の高さが決まらなければ、今後の津波による浸水区域を確定できず、都市計画の策定が遅れる』といいますが、住民の意見が十分に反映されないまま決定したのは問題です」と憤る。

防潮堤が先か住民流出が先か

 延長4.8キロにわたる大槌町の防潮堤のうち中心部沿岸に建設される長さ1100メートルの部分だけでも、県が見込む建設費は約260億円。その全額が国の災害復旧事業予算から拠出される。大槌町の担当者は、「いくら建設コストが膨らんでも、国の予算だから大丈夫」というが、国の財政は破産寸前だ。

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