2024年11月22日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年7月12日

図2 社会保障給付費と国民所得の変化率の推移
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 図2からも分かる通り、1990年代前半までは、大きな制度変更の影響を除けば、社会保障給付費は国民所得の伸びに見合って伸びていたものの、それ以降は小泉内閣下での抑制路線期間を除き、社会保障給付費が国民所得の伸びを大きく上回って推移してきている。

 さらに、原田泰・早稲田大学教授は、「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない」(2011年12月06日 WEDGE Infinity)で、「高齢者一人当たりの社会保障給付費を現行のままにしておけば、社会保障給付費の対名目GDP比率は、2010年の24.6%から2055年には54.0%まで29.4%ポイント上昇するため、消費税1%でGDPの0.5%の税収であることを考えると、29.4%ポイントを0.5%で割って58.8%の消費税増税が必要になる」としている。

 こうした巨額な負担は若い世代を中心として日本経済の大きな重荷となるに違いない。現状でさえ大きな世代間格差を抱える日本にあっては、これ以上若い世代にツケを押し付けないためにも、社会保障の効率化が望まれる。

「増税で経済成長」というまやかし

 以上のように、公的な社会保障支出は100兆円を超え、毎年1兆円以上の自然増加が見込まれ、先の原田氏の試算では2050年には150兆円にも達する勢いである。

 このような巨額な支出規模と高い成長率を見ると、社会保障関連分野を一大成長セクターにしたいというのは自然な成り行きであろう。実際、新成長戦略で主張された「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」とは、結局、増税を行い、その増税分を介護労働従事者に対する給与改善等社会保障関連支出の増加に当て、雇用の増加を図る。そして、雇用の増加は国内消費の増加をもたらし、新規産業の創出、その結果、経済成長の実現というメカニズムを期待したものであると考えられる。

 しかし、実際に増税して得たお金を政府が個人に成り代わり使うだけで経済は成長するものなのか。

お金を右から左に流すだけに過ぎない
落語「花見酒」

 唐突で恐縮だが、落語「花見酒」をご存じだろうか。あらすじとしては、花見が盛んな向島でお酒を売ってひと儲けをたくらむ二人が、道中、お酒の誘惑に耐え切れずに、兄貴分から弟分、弟分から兄貴分へと、持っていた一貫を代金としてお酒を飲み続け、結局、仕入れたお酒は飲み干し売り上げは元々持っていた一貫のみという内容だ。


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