2024年12月23日(月)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2012年4月3日

 極東シベリアでは、4月になってもまだ雪が残っている。ウラジオストクから10時間ほど汽車に乗ってタングステン鉱山のあるボストーク町に行く。春とはいっても夜はマイナス10度以下にもなる。休みの日など、昼間はダーチャ(別荘)に行って鹿やイノシシを撃ち、川の氷に穴をあけて魚釣りを楽しむが、夜になるとやることがなくなる。

 そこで、私の友人であるロシア人たちは「ウオッカ」を飲みはじめる。

ウオッカを楽しむロシア人男性(提供・筆者)

 彼らとウオッカの親密さは並大抵ではない。私が風邪を引くとウオッカを飲めと言うし、腹をこわすとウオッカで消毒すれば治ると言う。そこで、「健康のために」と、高らかに叫んでウオッカを一気飲みするのがロシア人の習慣だが、本当は健康に悪いことは言うまでもない。

 ウオッカを飲んだ後はどうするかといえば、ベロベロに酔っているにもかかわらず、ロシア式サウナに入る。サウナの中でこれ以上は熱くて我慢できなくなると、外に出て雪の中を転げまわる。

 これは、実に気持ちが良い。ただし、若い時はそれでもいいが、年をとったメタボのおじさんにとっては自殺行為である。なぜか身体に悪いことばかりするのが彼らの習慣となっており、何人もがダーチャで倒れたという話を聞いた。

 私と仲の良かったミーシャ氏(ロシア語通訳)は50歳で亡くなった。チタン工場のコイチバエフ氏も52歳だった。タンタル工場のジューコフ氏も51歳で鬼籍に入った。あまりにも早い死だったが、何れも心臓発作であった。

 WHO(世界保健機関)によると、ロシア人男性の平均寿命は62歳(2010年)で、日本人男性の79歳を大幅に下回っている。大半が心筋梗塞か脳梗塞で生活習慣病が主な死因になっているというが、ロシアの生活を見ていると「当然だろ」という気もしてくる。

資源ブームに乗ったニューリッチを狙え

 ところが、中には「健康オタク」のロシア人もいる。輸入サプリメントや、鹿茸のエキス(パントクリン)や朝鮮人参(ジンセン)をやたらに飲む人がいる。その中の一人がタングステン工場のシャゴイコ氏(54歳)である。

 彼は、人間ドックにかかるために毎年、来日している。彼はメニエール病で体の不調を訴えていたが、ロシアの病院をあまり信用していないので、日本に来るのである。彼が毎年、日本に来るようになって、一緒に温泉に行くたびに提案してくる話題がある。


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