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2020年9月6日

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ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が毒物を盛られた可能性があることについて、ドナルド・トランプ米大統領は4日、事態は「悲劇的」だが、毒物が使われた証拠を見ていないとして、ロシア非難を避けた。

記者団の質問を受けたトランプ氏は、「何があったのか正確なところは分からない。悲劇だと思うし、ひどい話で、こんなことあってはならない。まだ証拠は何もないが、目を通しておく」と述べた。

ドイツやイギリス、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、米国家安全保障会議(NSC)などがロシア政府の関与を指摘し非難しているが、トランプ氏はロシアを非難せず、むしろ中国のほうが世界にとって脅威だと強調した。

「みんないつでもロシアを話題にするのは興味深いし、皆さんがロシアを話題にするのは気にしないが、現時点でもっと話題にすべきなのはおそらく中国だと思う」と、トランプ氏は述べた。

ナワリヌイ氏は先月、ロシア・シベリアを旅客機で移動中に体調が悪化。同国の病院を経て、家族の強い希望でドイツ・ベルリンの病院に移送された。ロシアにおける汚職やウラジミール・プーチン大統領を激しく批判してきたことから、ナワリヌイ氏の支持者らはプーチン氏の命令で毒が盛られたと主張している。ロシア政府は一貫して、関与を全面否定している。

ドイツ政府とNATOは、ドイツ軍研究所で検査した結果、ナワリヌイ氏が神経剤ノビチョクで攻撃されたことを示す「疑いようのない証拠」が得られたと断定している。

NATOは4日、ロシア政府にノビチョク開発事業に対する国際査察を受け入れるよう呼びかけた。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も、ナワリヌイ氏への「恐ろしい」攻撃を全加盟国は一致して非難すると述べている。

米国家安全保障会議(NSC)は、毒物使用が疑われていることについて、「強い非難に値する」とした。NSCの広報官は、「私たちは同盟国や国際社会と協力し、証拠に基づいてロシアの関係者の責任を追及するとともに、悪意ある活動の資金を規制する」とツイートした。

一方、ロシア外務省は5日、もし確かにノビチョクのような神経剤が使われていたとしても、ロシア発のものとは限らないと述べた。

ロシア政府の反論

ロシア外務省は5日に短い声明を発表し、ナワリヌイ氏の病状に関連して「ロシアに対して複数の敵対的発言」があったことを指摘した。

その上で、欧米諸国やNATOでもノビチョク製造に使う化合物を長年研究しているとして、「たとえばアメリカでは戦闘用に、関連技術の開発者に150以上の特許登録が認められている」と述べた。

セルゲイ・ラヴロフ外相は、ドイツ政府はまだ何の情報もモスクワ検察に提供していないと説明。その上で、ロシアには「隠し立てすることは何もない」と述べた。

ナワリヌイ氏は8月20日、ロシア・シベリア西部トムスクからモスクワに向かっていた旅客機内で、いきなり体調を崩した。痛みに苦しんでいたという乗客の話もある。飛行機は中南部オムスクに緊急着陸し、ナワリヌイ氏はオムスク病院へ搬送された。

オムスク地域の毒物主任、アレクサンドル・サバエフ氏は、治療に当たったオムスク病院の医師たちは毒物の兆候を確認しなかったと強調した。

「突然の体調悪化を引き起こす外的要因は、ほかにもたくさんある。朝食をとらなかっただけでも、ああなることがある」とサバエフ氏は話している。

ノビチョクは、1970~1980年代にソビエト連邦(当時)で開発された神経剤。神経から筋肉への信号伝達を妨げ、全身の機能不全を引き起こす。

液体のほか固体としても存在し、超微細粒子にして拡散することもできるとされる。毒性が強く、効果が30秒~2分で現れる種類もあるという。

元ロシア情報員セルゲイ・スクリパリ氏とその娘が、2018年にイギリス・ソールズベリーで襲われた事件で使われた。スクリパリ親子は助かったが、イギリス人女性が後に病院で死亡した。英政府は、ロシア軍情報当局が襲撃したと非難した。

化学兵器禁止条約(1997年発効)で、ロシアとアメリカは神経剤を含む化学兵器の全廃に同意した。ロシアは2017年に備蓄廃棄を終え、アメリカは2023年末までに廃棄を完了する予定。

(英語記事 Alexei Navalny: Trump refuses to condemn Russia over poisoning

提供元:https://www.bbc.com/japanese/54045108

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