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2020年9月8日

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長年にわたりドナルド・トランプ米大統領の個人的な顧問弁護士だったマイケル・コーエン元弁護士が、トランプ氏はギャングのようにふるまい、「すべての黒人を低く評価している」と7日出版の暴露本で書いていることが明らかになった。

コーエン元弁護士は連邦議会への偽証、トランプ陣営による選挙資金法違反、脱税などの罪で禁錮3年の有罪判決を受け、現在は仮釈放中。服役中に書いた「Disloyal: A Memoir(不忠:回顧録)」で、自分が刑務所に入ることになったのと同じ罪をトランプ氏も犯していると指摘。トランプ氏は「ずるいうそつき、偽物、他人をいじめる横暴な人種差別主義者、獲物を狙う常習者、詐欺師」だと書き、「マフィアのボス」のような発想をする人間だと非難した。

元弁護士はさらに、トランプ氏が南アフリカ指導者の故ネルソン・マンデラ氏や、ヒスパニックの人たちについて差別的発言をしたと書いている。

これに対してホワイトハウスは、元弁護士がうそをついていると反論。「コーエンは恥辱にまみれた犯罪者で、議会にうそをつき、弁護士資格を剥奪された人物だ」と、ケイリー・マケナニー大統領報道官は声明で述べた。「信用をすべて失った彼が、またしてもうそをついてもうけようとしているのは、決して意外ではない」。

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複数の米メディアが、元弁護士の本の抜粋を報道している。トランプ氏について元弁護士が書いている内容を、以下にいくつか紹介する。

黒人とマンデラ氏について

「トランプは原則的に、あらゆる黒人を低く評価していた。音楽から文化、政治に至るまで」とコーエン元弁護士は書いている。

南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)と闘い、国家反逆罪で27年間投獄され、後に南アフリカ初の黒人大統領になったマンデラ氏については、「あんなのはリーダーじゃない」と言っていたという。

「黒人が仕切る国で、こえだめじゃない国があるなら、言ってみろ。どれも完全な(罵倒語)便所みたいだ」と、トランプ氏が話したことがあるとも書いている。

この「こえだめ(shithole)」という表現は、2018年1月にトランプ氏が中南米やアフリカの国について使ったと報道されたのと同じもの。トランプ氏は当時、複数の報道について、「自分は人種差別主義じゃない。君たちが取材した中で、自分ほど人種差別しない人間はいない」と反論していた。

トランプ氏が人種差別的だという批判は、就任からの4年近く、しきりに繰り返されてきた。11月3日の大統領選に向けても、引き続き問題となっている。

オバマ氏について

コーエン元弁護士は、トランプ氏が前任者のバラク・オバマ前大統領に執着し、「憎み、見下している」と書いている。

「トランプは『ニセオバマ』を雇い、自分と一緒にビデオに出演させた。その中でトランプはまるで儀式のようにアメリカ初の黒人大統領をばかにしてから、クビにした」と、コーエン元弁護士は書いている。

米メディアは、トランプ氏がかつて司会を務めたリアリティー番組「アプレンティス」のように、オバマ氏に扮(ふん)した相手をクビにする映像を放送している。

これは2012年大統領選の共和党全国党大会用に作られた映像と思われる。オバマ氏が再選された当時の大統領選では、ミット・ロムニー現上院議員が共和党候補になった。問題のビデオは、党大会で放送されなかった。

ヒスパニックの有権者について

元弁護士によるとトランプ氏は、「ヒスパニックの票は絶対にとれない。黒人と一緒で、連中は頭が悪すぎるからトランプには投票しない。僕のところには来ない」と述べていた。

トランプ氏は2018年の大統領選中、メキシコ人を繰り返し罵倒し、就任後はメキシコとの国境で移民流入厳しく取り締まってきた。そのため、ヒスパニック系への言動は注視されている。

一方で2019年にニューメキシコ州で開いた支持者集会でトランプ氏は、「自分ほどヒスパニックを愛する人間はいない」と強調していた。

キリスト教福音派について

キリスト教徒の中でも保守的な福音派は、トランプ氏にとって重要な支持基盤となっている。

2016年11月に当選して間もなく、ニューヨークのトランプタワーで複数の福音派指導者と会談したトランプ氏は、会談が終わると振り向き、「あんな(罵倒語)を信じる連中がいるなんて、信じられるか?」と言ったと、元弁護士は書いている。

トランプ氏は福音派の票を確保するため精力的に活動し、自分も敬けんなキリスト教徒だと繰り返してきた。副大統領のマイク・ペンス氏は、熱心な福音派の信者として知られる。

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プーチン氏について

元弁護士によると、トランプ氏はロシアのウラジーミル・プーチン大統領を高く評価している。その理由は、「ひとつの国を丸ごと自分のものにして、自分の会社のように、つまりトランプ・オーガナイゼーションのように、仕切ることができる」からだという。

元弁護士はさらに、トランプ氏がプーチン氏に「おべっかを使った」のは、2016年大統領選に敗れた場合には、自分の事業にロシアの資金を確保できるようにするためだったと書いている。

ただし、いざ選挙に勝ち政権を発足させた後は、トランプ陣営は「実際にロシア政府と共謀するには、あまりに混沌(こんとん)として無能すぎた」のだという。

ストーミー・ダニエルズ氏について

コーエン元弁護士は2016年の大統領選の直前、トランプ氏と不倫関係にあったと主張する米ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)氏に口止め料を払ったとして、13万ドル(約1400万円)を払った。この支払いが選挙資金法違反と認められ、元弁護士の実刑判決につながった。

コーエン元弁護士は自分はあくまでもトランプ氏の指示に従って行動したと主張してきたが、トランプ氏は一貫して否定している。

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暴露本によると、トランプ氏は「こういうのを和解するのは絶対、割りに合わないんだが、本当に多くの友人が払えとアドバイスするのでね」と話していた。「もし表ざたになったら、支持者はどう思うかな。ポルノ・スターと寝るなんてかっこいいと思うんじゃないかな」と、トランプ氏は発言したという。

マイケル・コーエンとは

コーエン元弁護士は長年にわたりトランプ氏の顧問弁護士を務め、トランプ氏の「フィクサー」とみられてきた。しかし、口止め料の支払いなどを機に2018年12月に有罪になると、昨年2月には連邦議会でトランプ氏を強く糾弾する証言を重ねた。

元弁護士は連邦議会への偽証、選挙資金法違反、脱税などの罪を認め、禁錮3年の判決を受けた。

今年5月には新型コロナウイルスの感染懸念からいったん仮釈放されたものの、7月初めにニューヨーク市内のレストランに家族といるところを写真撮影され、その数日後にはマスコミと接触しないという自宅拘禁の条件を不服としたため、連邦刑務所に戻された。

この措置は、今回の暴露本の執筆に対するトランプ政権の報復だと訴える元弁護士の請求を、7月下旬に連邦裁判所が認め、それ以降は刑期の残りを自宅拘禁の状態で過ごしている。

トランプ氏はコーエン元弁護士のことを、「チクリ」の裏切り者で、うそつきだと罵倒している。

元弁護士はかつて、自分はトランプ氏の身代わりになって死ぬ覚悟だと話していた。今では、トランプ支持者から殺すと脅迫されているという。

(英語記事 Michael Cohen's Trump book: The ex-lawyer's key claims

提供元:https://www.bbc.com/japanese/54067274

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