フリーペーパーが最も流行った時期とは
「インターネットが全盛になる前の20年ほど前、私は福岡でタウン誌の編集をやっていたが、当時のフリーペーパーの経営者はビルが建つほどもうかりました。福岡市にはこうしたフリーペーパーが3誌ほどあり、月刊誌で1カ月3000万円から4000万円ほど広告収入が入りました。その後、ネットが出てきて、フリーペーパーのドル箱だった飲食店の広告が「食べログ」「グルナビ」などに奪われることになりました」と、藤丸さんは振り返る。
ネットに加えて、コロナ禍にも襲われるなか、フリーペーパーにはどのような生き残り策があるのだろうか。藤丸さんは、メディア事業の多角化をポイントにあげる。
例えば、宮崎で出している某フリーペーパーは、広告を取って来るだけでなく、広告主の販売促進を手助けすることもやり、行政とも連携してPR事業まで行っているという。また愛媛県今治市で出した「COCOROE(ココロエ)(ココロエ愛媛)」は、地元の中高生が地元企業について意外と知らないことから、企業の職業紹介記事を掲載したところ、就活にも役立つとして学校でも配布されるようになった。
この就活情報サービスのコンセプトは評判になり、今では「ココロエ」の埼玉、東京版が発行されている。就活にフリーペーパーを使うことで、掲載企業から取材費という名目で収入を得ることができている。
自治体が出しているフリーペーパーも増えているという。「自治体PR」部門で昨年、最優秀賞を獲得した福井県池田町の「いけだ農村観光協会」が出した「いけだごのみ」は、人口約2500人の小さな町で県内で最も高齢化が進んでいるという町の課題を克服したという目的で編集された。
そこに暮らす人、移住してきて新しい町づくりに関わっている人の思いを、暖かみのあるデザインやリアリティのある写真で表現したのが評価された。自治体側もフリーペーパーを読んでもらうことで、住民の反応を確かめられる利点がある。自治体と連携するフリーペーパーも増えており、その存在感が増している。
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