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2020年9月13日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

(marzacz/gettyimages)

 記事や広告の掲載が新聞など紙媒体からスマートフォンを中心としたネット媒体への移行が進む中で、全国の各地域で発行されているフリーペーパーが独自の編集・広告により、行政や住民とつながり存在感を発揮している。地域に密着しているフリーペーパーをネットワーク化し、地域情報コンテンツ作りを含めたメディア活動を支援している日本地域情報振興協会の藤丸順子専務理事にフリーペーパーの現状とこれからについて聞いた。

藤丸氏

 フリーペーパーは、無料で配付されており、発行は週刊、月刊、季刊、発行部数も数十万部から数百部までさまざまで、中には紙のコンテンツをネットに掲載するクロスメディアにしているのもある。小さなコミュニティペーパーも含めると数は全国に3000ほどあるが、日本地域情報振興協会でデータベースを持っているビジネスとして発行しているのが1200ほど。

 「こうしたなかで、全体の2割が新しく発刊し、2割が消えていく感じで、これはこの10年くらいは変っていません。参入障壁は低いので、新規参入し易いメディアです。」。そこで心配されるのが、コロナ禍の影響だ。藤丸さんによれば、特にインバウンド向けのフリーペーパーへの広告出稿が厳しく、休刊に追い込まれたところもあるという。

 そもそも、フリーペーパーとは、どういう人が発行しているのだろうか。地元の印刷、デザイン会社などが多いが、中には、病院の院長もいて、ユニークな性格の人が多く、道楽と趣味で始めたものもあるが、回を重ねるごとに内容も充実、見栄えもよくなっていくという。

 広告の出稿者は、地域にあるレストラン、病院、美容院など地元の事業者が多い。結果として、地域住民からも支持され、応援してくれるファンも生まれる。

 ネット全盛の時代に紙(ペーパー)が生き残れるのはなぜだろうか。藤丸さんは「新聞の場合は広告料が高いですが、フリーペーパーなら新聞の10分の1で済み、しかも広告主が言った通りの広告を作ってくれます。フリーペーパーを作る側も小回りを利かせて気軽に、しかも安く発行できるのが魅力なのだと思います。住宅にポスティングできるので、通販会社などにとっては広告の効率が良いという面もあります。また、チラシと違って、小冊子になっているので読まれやすいという点もあります」。

 また、人手がいないマイナス面も逆にプラスに働いているところがあるという。例えば、少ない人数で運営しているため、広告取りなど自前でやらざるを得ないが、その代わり、それにより広告をくれた商店の経営者とつながりができて、イベントをやるときに協力してもらえたりするという。「地元と連携することにより、ネットでは得られない共感が支えになっているのではないかと思います。どのフリーペーパーにもそれぞれの物語があり、特色を出せばネットに負けないはずです」。

 藤丸さんは日本地域情報振興協会として「日本タウン誌・フリーペーパー大賞(アワード)」を設立した。背景には、フリーパーパーを制作している人たちに切磋琢磨して質の高い情報を発信してもらいたいという思いがあるという。それが地域の魅力の再発見につながり地域の活性化にもつながるという狙いで、10年ほど前にアワードを創設した。

 ちなみに昨年、無料誌部門で大賞を受賞した広島県のフリーペーパー「SEEKING HIROSHIMA」(英語版)。読者である訪日観光客がどんな情報がほしいかを観光客の目線で分かりやすく表示した誌面作りが高く評価された。公共交通機関の乗り換えなどが図や表を使って描かれ、広島に来た外国人が楽しく観光ができるように配慮されている。広島在住の米国人の協力を得て作ったそうで、スマホ版もあり広島を訪問する外国人に重宝されている。

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