ドイツと異なる
日本の再生可能エネルギーの発電事情
ドイツは1990年からFITを導入し再生可能エネルギーの導入支援を行ってきた。しかし、政府は今年4月1日から太陽光発電からの買い取り価格を大きく減額した。連邦参議院から、急激な減額は設備設置事業者の雇用に大きな影響を与えるとの意見が出たために、政策の再度の検討が行われていたが、結局僅かの修正で、家庭用の設備からの買い取り価格を1kWh当たり19.5ユーロセント、10kWから1万kWまでの事業用設備の買い取りを18.5~13.5セントにすることになった。事業用については全量買い取り制度もなくなる。また、太陽光発電設備が5200万kWに達した時点でFITを廃止することも決定された。
ドイツでは風力、太陽光の導入が進んだ結果、電力需要がない時に発電量が余剰になる事態が生じることになった。余剰電力はお金を付けて近隣諸国に引き渡すことが行われるほどだ。さらに、風力が多い北部から電力需要が多い南部への電気が、送電余力のないドイツ国内ではなく送電能力があるチェコ、ポーランドなどの近隣諸国を迂回して流れる事態となり、近隣諸国から自国の電力の安定性に問題が生じると抗議の声があがっている。
北部からの風力発電の電力を送る送電線の能力がなく送電網に影響が生じるために、今年の冬はドイツ国内で停電する可能性もあると指摘されている。消費者負担が大きくなったことに加え送電能力の問題も出てきたために、政府は再生可能エネルギーの導入を抑制する方向に政策を転換した。
標準家庭の負担額は月2000円?
はたまた4000円?
米国でも、ニューヨーク州のロングアイランドで事業用の太陽光発電のFITが開始されることになった。しかし、買い取り価格は1kWh当たり22米セント。ニューヨーク州の家庭用電力料金と殆ど変らないレベルだ。消費者の負担と送電線の能力問題を考えると、このレベルの価格で導入される設備量以上を受け入れることはできないということだ。
欧米とは地理的な形状が異なるために、送電線もネットワーク状になっていない日本で設備を大きく増やすためには、ドイツ、米国とは異なるレベルの送電線網と蓄電設備の整備費用が必要になる。この負担額はいくらになるのだろうか。それよりも負担を行えば再生可能エネルギーを35%も導入することが物理的に可能だろうか。適地は導入が進むに連れどんどん少なくなっていく。いずれにせよ、再生可能エネルギー導入の費用は、今後電力料金の大きな上昇を引き起こすことは確実だ。
今年度導入されたFIT対象設備については20年間買い取り価格が保証されている。仮に同じ価格が2030年まで適用されると、2030年のFITの支払額は標準家庭で月額4000円になる。FITの累計支払額が2030年までに半分になったとしても2000円だ。産業用電力料金も同様に値上がりすることになる。30%から60%の値上がりだ。この金額に加え送電線と蓄電設備の整備費も必要だ。電力料金の値上がり額はいくらになるのだろうか。