化石燃料購入費用で上がる電気代
大飯原発3、4号機の再稼働は行われたが、他の原発の再稼働については不透明な状態が続いている。原発の停止で夏場の電力供給不安が生じるが、さらに大きな問題は電力料金だ。
震災前に原発は日本の電力供給の30%弱を担っていた。供給量では2800億kWhだった。夏場の一時期を除けば、この発電量を石油火力とLNG火力の稼働率を上げることで賄うことが可能だ。石炭との比較で燃料代が高い石油、LNG火力の震災前の稼働率は、それぞれ23%、55%だった。石炭火力並みの75%の稼働率を想定すれば、原発の発電量をちょうど賄える。
しかし、問題は、燃料代だ。今年4月の輸入価格を基に計算すると、原発の発電量を賄うための石油とLNGの購入料は年間3兆円を超える。電力料金の平均20%以上の値上がりをもたらす。今年度原発を稼働する目処が立たない東電の電力料金が燃料代の負担のために上昇するが、再稼働が限定される状態が続けば、他の電力会社の料金もやがて上昇することになる。
さらに、貿易赤字も拡大することになる。3兆円の燃料購入費用は大きなインパクトを与える。今年1月から5月の貿易収支も2月に極僅か黒字になったのを除けば、赤字が続いている。全原発が停止した5月の貿易収支は輸出5兆2000億円に対し輸入6兆1000億円だ。発電用の燃料購入も輸入金額増の原因の一つだ。
温暖化対策費用の負担も電気代に
原発の停止による化石燃料の購入は、もう一つ問題を引き起こす。二酸化炭素排出量の増加だ。原発の発電量を石油とLNGで賄うと、二酸化炭素の排出量は年間で1億9千万トン増加する。日本の温室効果ガス排出量の15%に相当する。将来、電力料金の値上げにより産業流出が発生し、温室効果ガスはある程度減少する可能性がある。しかし、15%の減少を招くほどの流出はないだろう。もし、近い将来に15%減が実現していれば、日本経済は壊滅的な影響を受けている。
省エネが進んでいる日本では、二酸化炭素を1トン削減する費用は数万円から十数万円必要とされている。一方、エネルギー効率のよくない新興国では削減を比較的簡単に進めることができ、削減費用は数百円から数千円だ。
世界のどの国で削減しても効果は同じである以上、効率のよい新興国で削減を進めるのが合理的だ。このために、温暖化防止に関する京都議定書では、先進国が自国の技術と資金を利用し途上国で削減を進め、その削減分を先進国が自国の排出削減量として計算できる制度を導入した。クリーン開発メカニズム(CDM)と呼ばれる制度だ。日本もこの制度を利用し、2008年から2012年の京都議定書の排出目標達成のために、主に中国のCDMプロジェクトからの排出枠を購入した。その量は約4億トン、購入費用は1兆円近いとみられる。