その時々の景気変動が若者の雇用に大きな影響力を持つのは、日本の雇用慣行として行われている「新卒一括採用」の影響が大きい。そもそも新卒一括採用は戦前に起源を持ち、戦後の高度成長期に一般化し、現在に至っている。ただし、こうした雇用慣行が存在するのは世界的に見ればごく少数である。もちろん、企業側には、低コストで効率的に大量の人員を確保できるメリットが、求職者には経験者と同じ土俵で争う必要がないといったメリットがあるのがこれまで続いてきた理由であり、合理的な理由もあるだろう。
「若者の◯◯離れ」は当然のこと
しかし、先にも見たように、新卒一括採用は景気変動の影響をその時々の若者に押し付けるというデメリットを持っている。そして「新卒」という肩書きを失った瞬間に、労働市場で差別的な扱いを受けることになるのだ。いったん、既卒で無業、もしくは非正規社員となると、その後正社員となる確率は限りなく低くなってしまう。そして非正規社員は正社員に比べて雇用が不安定であり賃金も低く、社会保障や福利厚生の面でも不十分、そしてなにより技能の蓄積が困難となるので、生活自体が不安定化してしまう。
若者の生活が不安定化すれば、若者は自己防衛に走るのが当然である。最近、「若者の◯◯離れ」ということが喧伝されるが、なんのことはない、「お金の若者離れ」がその大きな原因であり、若者に消費させたければ安定した所得を生み出す安定した職を供給するのが一番の近道である。それもせずに、若者にお金を使えというのはどうしたことだろう。
企業は長期的な視点で経営を
そもそも企業は短期的な視点ではなく長期的な視点を持って一時的な景気変動に影響されず経営を行なうのが合理的な気がするが、日本の企業は実際には短期的な視点、狭い視野で経営を行なっているようだ。
例えば、1980年代後半から1990年代初頭にかけてのいわゆる「バブル景気」時には人手不足が著しく大量の新卒者の採用を行う一方、2000年代以降は逆に新卒者の採用の抑制を行い、その結果、多くの企業で従業員の年齢構成が歪となるなどの問題が発生している。また、いわゆる「団塊の世代」の労働市場からの大量退出に伴い技能の継承の断絶が問題になったこともあったが、これも長期的な視点を持って採用を行なっていれば当然防げた事態であっただろう。
次回は、そもそもイスの数が減少していくイス取りゲームにあって、自分はイスに居座り続けながら、新規参加者にのみイス取りを強制することの問題点について、そして雇用における世代間格差の解消に資する施策等について考えてみる。
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